Netflixドラマ『阿修羅のごとく』3話あらすじ感想&考察:浮気の結末と別れ,咲子の決断

Netflixシリーズドラマ『阿修羅のごとく』第3話

画像引用:ナタリー

Netflixドラマ『阿修羅のごとく』3話ネタバレなしあらすじ

四女・咲子が倒れ、次女・巻子が駆けつける。巻子に連れられて下宿に帰ってきた咲子は、英光の浮気現場を目撃してしまう。開き直る英光を下宿に残し、ひとまず咲子は巻子の家に身を寄せた。

三女・滝子に想いを告白した勝又だったが、愛の告白は公園でのボヤ騒ぎに発展。

長女・綱子と巻子は母・ふじと白菜漬けを仕込む。鷹男の浮気に悩む巻子は、ふじに勇気づけられ、落ち込んだ気持ちを奮い立たせるのだった。しかしその日、父・恒太郎の浮気相手のアパート前で、ふじは意識を失い倒れてしまう。

Netflixドラマ『阿修羅のごとく』3話のネタバレ感想・見どころ

メガネを外して解き放たれた愛

滝子と勝又は、メガネを外すと心のロックが解除される仕様らしい。

引き続き、微笑ましい滝勝カップルです。夜の差し入れにあんぱん。気を抜くとすぐ滝子に見惚れてしまう勝又。カップルだらけの公園が気まずそうな滝子。勢いに乗ったら意外とグイグイ行く勝又もすごくいい。

どこもかしこも浮気だらけで、愛の粘度高めなこのドラマの中で、変人男子と奥手女子の清流のごとく清らかな恋愛には本当に癒されます。

作中の男は誰も彼も浮気ばかりだけど、どうか滝子と勝又だけはこのまま聖域でいてくれ…!

咲子の選択が眩しすぎる

2話の感想で、英ちゃんには滝子が必要だ!と若い二人を応援するおばのような気持ちでいたのに、英の野郎があっさりと浮気しやがりました。

浮気を責めずに、チャンピオンの夢を放ってラーメンを食べたことに怒る咲子を見て、代わりに私が悔し泣き。浮気現場に入って一番に言ったのは「この女誰?」じゃなくて「誰が食べたの?」だったこともかっこいい、だからこそこちらは胸が苦しい。

咲子は英ちゃんを、自分の夢を叶えるための、綺麗に言うと「恋愛よりももっと高次なパートナーとして強く思っている」。もっと短く言うと「執着している」と思いました。英ちゃんのことも、ボクシングの才能があるからじゃなく、ダメなやつだから応援しているように見えます。英ちゃんに素質があって一人で自己管理もできる男だったら、咲子は一緒にいないんだろうな。

自分たちを見下してきたやつらを見返したいと誓う二人でしたが、そんなに見下されてきたのかい、咲子?咲子がこれまでどういう気持ちを抱えて今に至るのか、すごく気になります。

自分が浮気しても戻ってきて誰よりもチャンピオンの夢を信じてくれるんだから、さすがの英ちゃんも、咲子に一生頭が上がらないだろうと信じたい。こんなかっこいい女、本当にいないよ英ちゃん。願わくば、まだ出て来ていない英ちゃんの母・高畑淳子がいい姑でありますように…。

にしても、どうして周りの人たちは後になってから「本当は嫌な人だと思ってた」とか「怪しいと思ってた」と言うんだろう。そんなやつなんだから気にすんなよという慰めの意味もあるだろうけど、もし自分が言われたら、今までそう思いながら私たちのこと見てたの?と軽いショックです。せめて当事者が豪快に悪口を言い出してから、一緒に「そうだそうだ!」と言うくらいしておきたいな、と思います。

感想がひっくり返った3話

父の浮気は解消され、母は去り、四姉妹それぞれの問題も解決。え、これ最終回?というほど濃密な3話でした。3話を終えて、私のこの作品への感想は見事にひっくり返りました。

これは「浮気してもふんぞり返って威張る夫 vs 文句を言えず耐える妻」の話ではなく、「妻を想いながら浮気する夫 vs 夫を許す妻」の絆を描いた作品だと。

夫は浮気が妻を苦しめていることを知っていて、すまない、すまないと心底思っていると、鷹男が男たちを代表して教えてくれました。そして、父の泣き声が四姉妹の、私の、視聴者全員の溜飲を下げた。

やっぱり鷹男は本質はいいやつだし、機転もきく。ただちょっと調子がいいタイプではありますが。

そして、妻たちも夫に逆らえないから黙って我慢していたんじゃない。

夫が戻ることを信じているから。自分が選んだ男に間違いはなくて、その男の妻だというプライドがあるからこそ、自分の意思で見て見ぬふりをし、唇を噛み締めて堪えていたんだとわかりました。それは女たちにとってはとても苦しいことで、それこそ鬼の形相になってしまうほど。

3話中盤、白菜を漬けながら母が「女はね、言ったら負け」と言ったときはまだ、そんなわけないよ!もっと怒りの抗議をするべきだよ!と思っていました。

文句言って怒って、夫と別れるなり浮気相手と別れさせるなり、パーッと解決しちゃいなよ!と思っていた外野の私はなんと浅はかだったか。

この作品の妻と夫たちには、もっと信頼と愛と深い絆があったと思い知らされ、脳天パンチを食らったような衝撃を受けた回でした。

Netflixドラマ『阿修羅のごとく』3話の考察・解説

静かな夫婦バトルは母の判定勝ち

「女は言ったら負け」と巻子に言い聞かせ、浮気のことなどおくびにも出さずに振る舞い続けた母ふじ。母が倒れた当日、父・恒太郎は浮気相手に振られて戻り、最後まで母は浮気のことで父を責めることなく亡くなりました。

1話から3話まで、お互い無言のまま静かに繰り広げられた夫婦のバトルは、母の判定勝ちと言えます。

そもそも、バトルだと思っていたのは四姉妹や視聴者の部外者だけで、当人たちは争う気持ちさえなかったのかもしれません。3話を終えてから振り返ると、父と母が浮気のことを口にしなかったのは、いずれ、あるべきところに戻るとわかっていたからのようにも思えます。部外者が勝手に争わせて勝敗を下したから、母の”判定勝ち”。

父は土屋友子を愛していたのか

父は、浮気相手の土屋友子と、息子・省司を連れて遊園地に行き、そこで友子から「結婚しようと思う」と告げられます。おめでとうと返す父の表情には、驚きも悲しみも見られませんでした。

ここで疑問になるのは、父と友子は愛し合っていたのか?ということ。二人の会話シーンは少なく、想像にはなりますが、愛より情で結ばれた関係だったのではないかと思います。

父と友子の関係は7年以上になり、付き合いはじめ当初既に小学2年生の省司は生まれています。1970年代は、シングルマザーの環境は現代よりずっと厳しく、白い目で見られることもしばしば。未婚の母親は「不道徳」だと差別され、離婚歴のある女性は「欠落者」と蔑む風潮が強く、さらに子どもの父である男性側が養育費を払うケースは多くありませんでした。

おそらく父と友子には、最初は男女の火遊びな時期も多少あったが、次第に土屋親子のことを放っておけなくなったのではないでしょうか。娘ばかり四人を育て上げた父にとって、自分の娘と同じくらいの年齢の友子が、自分が手を離せばこの先苦労を背負って生きてかなければならないことを見過ごせなかった。無言を貫く父の胸中には、”浮気”では片付けられない、そんな思いがあるように思います。

映像で表現する生と死

3話には、映像だけで生と死を表す印象的なカットがありました。

まず母が倒れた直後、卵が割れて、白い殻から黄身がどろーっとゆっくり坂を下るカット。その後、父と土屋親子の遊園地のシーンが続きます。遊園地では

  1. スウィングブランコに乗る父と省司。父が黄色、省司が白いブランコに乗っている
  2. 手動のアニマルカートに乗る3人。父と友子はシマウマ(白)、省司はキリン(黄色)
  3. ジェットコースターは白いシートで、よく見ると機体外側は黄色
  4. 黄色いミニカートに乗る省司を見つめる父と友子

と、黄色4連発が続きます。ここまで続くと、作り手は意図的に黄色い乗り物に乗せていると考えるほかありません。

崩れながらゆっくり坂を下る黄身は「死に向かっていく母の命」を、遊園地の乗り物の黄色には「命の躍動」「生の希望」が象徴されているのではないでしょうか。

また、病院のシーンが終わり、竹沢家の縁側の菜切り包丁とまな板が映し出されました。このカットで、母の死が見る側に伝えられます。母が使っていた菜切り包丁は、夜の静謐の中で月光を受けて光っていました。これは菜切り包丁が主を失ったこと(=)、母が怒りから解放されたこと(=父の浮気の終わり)の暗示でもあるでしょう。

ここに注目!:母が倒れたあと、坂を下る卵 → 遊園地の乗り物の色
ここに注目!: 病院の場面と墓参りの間に映し出される菜切り包丁のカット
▼次回4話のあらすじ/感想&考察はこちら
▼前回2話のあらすじ/感想&考察はこちら