Netflixシリーズドラマ『阿修羅のごとく』第6話
前回5話で英光は式場で倒れたと思われ、咲子の暮らしはどうなってしまうのかハラハラを引きずったまま始まった6話。物語の中では11月を迎え、晩秋の冷たい風は四姉妹たちの心にも吹き抜けました。
6話を終えてもまだ滝子以外の問題は解決されず…。12月に突入するだろう最終回7話では、幸せな年末を迎えられますように!
画像引用:ナタリー
本記事はネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎
Netflixドラマ『阿修羅のごとく』6話ネタバレなしあらすじ
次女・巻子と三女・滝子は、滝子の結婚式で体調を崩して以降入院している英光を見舞いに病院へ。しかし英光は、四女・咲子が無理を言ってすでに退院していた。
英光の状態を隠し強がる咲子を、滝子と巻子は心配している。
勝又は枡川の女将から夫の浮気調査を依頼される。それを聞いた綱子は自分がその浮気相手だと笑った。
そんな中、長女・綱子の縁談が決まる。悩む綱子だったが、父・恒太郎に背中を押され、お見合い相手に会うことを決意する。
そして、復帰した英光は世界チャンピオンを目前に前哨戦に挑むのだった。
Netflixドラマ『阿修羅のごとく』6話のネタバレ感想・見どころ
涙の咲子が報われますように
咲子が、いまの咲子が辛すぎる…。
息子のためにますます念仏に没頭する義母と体調不安を抱えて暴れる英ちゃん。まだこの時はよかった。そのうち英ちゃんは良くなって、次の試合ではチャンピオンらしくバチボコに相手を押さえ込んで勝利すると信じていられたから。
でも、試合はぐぅの音も出ないほどの惨敗、そして英ちゃんはまた倒れて病院へ逆戻り。
毛皮のコートで武装し、今まで姉にさえ強がって見せていた咲子が、父にがしっとしがみついて泣いていたのは、心に突き刺さりました。姉に相談や弱音をこぼしたりするのをすっとばして、父に。
自分が父に縋って泣くとしたらどんな状況だろうと考えると、よほどのこと以外イメージできなくて。咲子がこんなギリギリまで耐えていたと思うと、胸が痛みます。母がまだ存命だったら、きっと相談とかできていましたよね…。
そして娘の抱える問題を自分にはどうしてやることもできない父も、どれだけ悔しいだろう。そりゃかけるもないはずだ。泣く咲子を前に無言を貫く父に、「黙ってないでなんか優しいこと言ってあげて!」と思っていましたが、きっと、何を言っても気休めにしかならないことを父もわかっていたんでしょう。
「見下してきた奴らを見返したい」と英ちゃんに夢を託す咲子は、チャンピオンが目前に迫ったとき、「もうやめてもいいよ」と英ちゃんに言いました。でも、咲子には英ちゃんがここでやめるわけないこともわかっていた。
雨を見つめながら堪えた涙は、二人で追いかけた夢は終わり、暗闇に向かってゆっくり転がっていくことを思っての悲しみと覚悟の涙だったと思います。
英ちゃんがチャンピオンの夢に再挑戦できるまで回復できたらいいけれど、長らく支えにしていたその夢が潰えてしまったら、咲子の「見返したい」欲を満たしてくれるものはなんだろう。姉たちはもう十分咲子をすごいと認めているだろうし、咲子がそれを受け入れてくれたら円満ラストだけど…
咲子の可能性をまだ信じたい私は、咲子がこの地獄を乗り越えてチャンピオンの嫁として返り咲き、毒々しい美しさで人々を魅了してほしいと願ってしまいます。
勝又の他者肯定力
いつでも、勝又は思いをきちんと言葉にして届けてくれます。これだから、勝又はいいんですよねえ。作中の他の男と違って。
咲子の不幸を願ったことがあると落ち込む滝子に、「どうしたの!」、「思ったからなったわけじゃないよ!」と語彙力どこいった?な不器用な言葉で、大きな声で、何度も投げかける勝又が素敵でした。
なにこの忠犬のように真っ直ぐピュアな夫…。勝又の全力肯定ワードを誰よりも浴びた滝子の自己肯定感がすくすく育つのも、納得できます。
思えば勝又は最初から、誰のことも決して否定しないし、自分が不利になるとしても相手を尊重した選択ができる男でした。父や綱子の浮気を批判しないし、英ちゃん滝子のマウントにひがみも怒りもしなかった。
決して鷹男のように調子がよくて器用な人付き合いができるタイプじゃないけれど、勝又が姉たちから存分に可愛がられているみたいで微笑ましい限りです。岩戸のように堅く閉ざされた滝子の自己肯定感を、いとも簡単にこじ開けて変身させてみせた男を、信用しない理由がないのである!
娘はいずれ母親の親友になる
鷹男と啓子が不倫していること、それを母・巻子が知っていて心を痛めていることを、とうとう娘の洋子が気づいてしまったようですね。
母親にとって娘は、娘にとって母親は、敵だったり重荷のときもあるけれど、最終的には親友になるんだと思います。もちろん子どものころはそんなこと思わず、いかに母親の目を欺くかばかり考えていたけれど。
でも、娘はいずれ、自分で物事を選び動かせる力を得て、母親の問題を一緒に抱えることができる強い味方で親友になる日が必ず来ます。母親だから。理由はそれだけですが、それ以上強力な理由がないのだから仕方ない。
さあ、尾野真知子ファンのみなさん。洋子を味方につけた巻子が、本来の馬力を取り戻して、鷹男と啓子をけちょんけちょん(死語)にすることを期待しましょう。
自由で強い綱子
6話後半、綱子姉さんが、巻子が用意した「女の正しい幸せ」の舞台から華麗なダイブを決めました。
巻子と綱子にとっての幸せが全然違う。巻子が綱子に「これが幸せというものよ」と差し出す幸せは、綱子にとっては道端の石ころも同然だったようです。
自分で選んだ道で、自力で幸せを調達できる綱子の方が、敵も多ければ追う傷の数も多いだろうけれど、保守的で時代の求める妻像を守っている巻子の方が満身創痍なのは皮肉です。
夫を失った可哀想な未亡人として慎ましく生きることを捨て、再び自らの情熱をかがり火に我が道を突き進む、綱子姉さんの強かさにしびれます。自由な女はいつの時代も、魅力的で、美しい!
Netflixドラマ『阿修羅のごとく』6話の考察・解説
父・恒太郎の「男の方がずっとずるいさ」の意味
綱子と父・恒太郎の会話の中で、恒太郎が言ったセリフの意味について。
この言葉は、恒太郎と母・ふじが保ち続けた関係性を表していると思います。
まず前提として、恒太郎は男より女のほうがずるいと思っているのでしょう。
「そう思ってた“ほうが“」は、A:男がずるい、B:女がずるいの二者を比べたときの「better」の意味にとれます。
実際は女のほうがずるいけれど、男がずるいと思うほうが”ケガ”=”争いや揉め事”が少なくてすむ。だから恒太郎は男のほうがずるいと思うことにしている。
これはまさに、生前のふじに対する恒太郎がとった接し方そのもの。
恒太郎の浮気中、恒太郎とふじが浮気のことにお互い触れなかったのは、傷を最低限に抑えて平穏を保つためだったのだと。少なくとも恒太郎はそう思って沈黙を貫いたのだとわかります。
英光の劣勢を強調するカメラワーク
身体の不安を抱えながら挑んだ英光の世界チャンピオン前哨戦で、思わず「うま!」と声が出てしまったカメラワークがありました。
①試合開始直後、揺れるリングロープが数秒映るショット
英光を映しながら試合開始のゴングが鳴ったあと、英光はすぐさま敵に向かっていきますが、カメラは英光を追わずにその場に固定されたまま。
英光が向かっていった方向から、ミットがぶつかり合う鈍い音は聞こえているのに、カメラは揺れるリングロープを映し続けます。
試合の様子を映すことなく、そのまま場面は綱子の家に切り替わります。
「試合どうなってんの!?」、「英光はちゃんと戦えているの!?」と、こちらの不安と関心を煽り、引きつける効果絶大のショットでした。
②試合終盤、劣勢の英光を映すカメラがブレまくる
対戦相手のロバート・アレス・Jrの怒涛の攻撃をふらつきながら受ける英光を、カメラはブレブレの動きで追いかけます。
この映像のブレが、英光のふらつく感覚を見る側にリンクさせ、英光が満身創痍であることを強調するとともに不安感を増長します。
英光がもう反撃する力がないことを、試合の実況がなくとも、映像で明確に示しました。
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