Netflix『新幹線大爆破』ネタバレ感想&考察解説:働くおじさんたちがこんなにもかっこいいとは

久々に日本の映画が世界ヒットを飛ばしました!

GW直前の4月23日公開から、1ヶ月遅れで『新幹線大爆破』をやっと見たんですが…、もっと早く見ておけばよかった!と後悔しました。なにこれすっごいおもしろい。

スピード、スケール、車両サイズどれをとっても最大級の新幹線アクションはもちろん、働く人たちの頼もしさや情熱も魅力的。1秒たりとも見逃せない最高のアクション映画でした。

あらすじ・感想考察、作品情報などまとめましたので、観賞後の振り返りにどうぞ!

本記事はネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎

Netflixリブート版『新幹線大爆破』の評価

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総合評価  4.3 / 5

評価コメント:コナン映画!?な超アクションの裏で頑張るおじさんたちがかっこいい

日本の爆発アクション映画といえば、そうコナン映画です(違う)。

コナン映画はアニメだから、どんなはちゃめちゃなアクションでも力技で成し遂げます。でもこの『新幹線大爆破』は、不可能にも思える作戦を、たくさんの大人たちが一生懸命に頭を捻り手を動かして、本当に実現させてしまいます!

たくさんの無名で平凡なおじさんたちが自分にできる仕事を積み重ねた結果、奇跡をたぐり寄せるところに本作のおもしろさがあります。

犯人はわりとすぐわかってしまうし、展開に意外性はあまりないですが、救出劇と爆弾処理のスリルは極上!1秒たりとも気を抜けない、瞬きさえも惜しいくらいです。

お菓子と飲み物を横に置いて、先にトイレも済ませて、ラストまでノンストップで見る用意をしてからご覧ください!

Netflixリブート版『新幹線大爆破』が視聴できる配信サービス

  • Netflix

Netflix制作版の『新幹線大爆破』は、現在Netflixでのみ配信されています。

原作版の1975年『新幹線大爆破』は、Netflix、Amazonプライムビデオ、U-NEXT、Huluで配信されています!

 

Netflixリブート版『新幹線大爆破』ややネタバレあり前半あらすじ

【新青森〜】東京行き新幹線に爆弾で乗客パニック!

新幹線車掌・高市(草彅剛)は、車両センター青森派出所に見学に来た修学旅行生たちへの車両説明を終え、15時17分新青森発・東京行きの新幹線「はやぶさ60号」(以下60号)に乗り込んだ。

60号が定刻通り出発した直後、JR東日本ご意見承りセンターに「60号に爆弾を仕掛けた」との電話が入る。爆弾は速度100km/h以下で爆発するという。真偽証明のため、青ヱ森鉄道貨物車両にも同じ爆弾が仕掛けられており、減速した貨物車両は犯人の言葉通り爆発した。

東京のJR東日本新幹線総合司令所 司令長・笠置(斎藤工)は、60号の速度を260km/h→120km/hまで落として時間を稼ぎつつ、直ちに全線運転中止して線路上の車両はすべて退避させる決定を下した。

60号の乗務員・高市、藤井(細田佳央太)と、運転手・松本(のん)は、司令所から爆弾が仕掛けられたことを告げられ、「乗客には爆弾を公表しないまま八戸駅を通過」するよう指示を受ける。

司令所には、警視庁警部補・川越(岩谷健二)、総理大臣補佐官・佐々木(田村健太郎)らが応援に駆けつけた。八戸駅通過後、犯人から爆弾解除料1000億円を要求する電話が入る。佐々木によると、政府は犯人の要求に応じない意向を表している。冷静に最善の対処をするためと、佐々木は乗客に爆弾のことを公表するよう指示する。

爆弾のことを知らされパニックになった乗客たちは、高市に詰め寄る。「ママ活」スキャンダルでバッシングを受けている共和党議員・加賀美(尾野真知子)は、スキャンダルを払拭するチャンス!と、乗客をなだめるが言い争いはヒートアップするばかり。高市は一旦乗客全員を席に戻し、なんとかその場を収めた。

諏訪官房長官(坂東彌十郎)は、60号爆弾事件の会見を行った。犯人からの要求1000億円の件については明かさず、「前例がない」ことを理由に、政府は決断を渋っているようだった。

【盛岡付近】前方に故障列車が!ギリギリ逆線回避

司令室に、「60号の進む線路上、盛岡付近に故障のため動けなくなっている車両がある」と連絡が入った。笠置は、60号との衝突を避けるため、60号を一時的に下り車線走行に変更する「逆走運転」を提案する。

下り線を走行中の「はやぶさ・こまち27号」と60号がすれ違うのとほぼ同時に、ポイントで車線切り替えを行わなければならない。60号は102km/hまで減速して走行し、下り線への車線変更に成功。60号先頭と27号最後尾が接触してしまい、かなりの衝撃と車両一部破損はあったが、問題なく走行は続けられそうだ。

元ニート実業家の等々力(要潤)が1000億円を集めるクラウドファウンディングを立ち上げ、乗客たちによって瞬く間に拡散された。

60号乗客の中に、観光ヘリ会社社長・後藤(松尾諭)がいると発覚し、車内は騒ぎになる。後藤の会社の観光ヘリが青森県内の小学校に墜落、8人が亡くなる事故を起こしていた。高市は乱闘の中、倒れた後藤を助け出し乗客から隔離した。

高市は、修学旅行生・小野寺柚月(豊嶋花)からの「憎まれている人を助けるのはどんな感覚か」という問いに、「仕事だからできることもあるが、助けたいと思ったことに嘘はない」と答えた。

【一関〜白石蔵王】乗客救出作戦、取り残された9人

60号の最後尾車両を切り離し、救援列車を連結させて乗客を移動させる救出作戦に挑む。

まず、最後尾の連結を手動で解除するために必要な工具を届けるため、別の車両が60号に並走し、工具の受け渡しが行われた。乗客の電気工事士・篠原(六平直政)も作業に協力し、最後尾の連結解除は完了。

仙台駅を通過後、直ちに救援列車が60号に連結され乗客の移動が始まった。移動の混乱の中、柚月の姿が見えないことに気づいた高校教員・市川(大後寿々花)は、柚月を探しに60号へ戻る。移動を拒否して暴れる後藤を、加賀美と秘書・(黒田大輔)、等々力、高市、藤井が力づくで救援車両に乗せようとする。

そのとき、救援列車の非常ブレーキが作動してしまい、60号は引っ張られる形で徐々に減速していく。松本は咄嗟の判断で急ブレーキをかけ、救援列車を60号に追突させる。連結部破損によって連結は解除された。

救援列車に移動していた乗客340名と乗客1名は無事救出できたが、60号には乗客6名と高市、藤井、松本の9名が取り残されてしまった。そのうえ、追突の際藤井は肩に重傷を負っていた。

9人救出の手立てはなく、もし終点の東京駅で爆発したら尋常ではない被害が及ぶ。東京まであと約3時間。判断の時が迫る中、犯人から再び電話が入るーー。

Netflixリブート版『新幹線大爆破』ネタバレあり感想

熱く渋くかっこいい、地味なおじさんたち

冷静に状況を見て的確な指示を出す指令長・笠置がかっこいいのは言うまでもありませんが、指示に従って現場で手を動かす、作業服のおじさんたちのかっこいいこと…!

昨今、かっこいい仕事というと、パソコンひとつ、言葉ひとつで瞬時に大金を動かし世界をひっくり返すブローカーとか経営者、弁護士、医者…。テレビや映画には頭脳もセンスも説得力もあって、スマートに仕事をこなす主人公たちが溢れています。

普段、本作に出てくるような作業着おじさんたちをかっこいいと思う瞬間って、ほぼありませんでした。ブルーカラーの仕事はホワイトカラーよりも序列が下だと、どこか思ってしまっていたところもないとは言えません。

でも作中のあらゆる局面で、テキパキと作業するおじさんたちの頼もしさ。長年の仕事で身につけた専門知識や技術は、こんなにも人の役に立つのかと衝撃的でさえありました。

爆破予告を聞いて、スーツの男性は証券を持って慌てふためき、仕事で儲けまくっているだろう最上級車グランクラス乗客もただ避難指示に従うだけ。連結解除作業に名乗りを上げた電気工事士は、その人たちよりもずっと低所得。でも彼がいなかったら乗客避難は成功しなかったでしょう。

スーツやアイドル衣装に身を包んだ若い高収入イケメンだけじゃなく、頑張るおじさんだってかっこいいんだぞ〜!と、作業着の地味なおじさんたちのかっこよさを世に知らしめる意図があったと思います。

少年たちが「はたらくくるま」に惹かれるのはこんな気持ちなんでしょうか。成人女にも少年の心をわからせてしまうなんて、なんて映画だ!

本作を見た翌日、家の近所で新築のために重機で土を整備しているおじさんを見かけました。70歳をゆうに超え、真っ黒に日焼けしたそのおじさんの手慣れたショベルカーさばきを見て、自然に「かっこいい」と思いました。何度も見かけていた光景ですが、今まで本当に気にも留めていなかった…。

同じような顔のおじさんたちが、同じ作業服を着て、黙々と作業をこなす。たったそれだけの地味な映像なんですが、そこに表れる、おじさんたちの仕事への「情熱」「信念」は見た人の価値観を覆すほど熱く、渋く、かっこよかったです。

75年版・倉持指令長の”正義”を受け継ぐ

高市や笠置は何度も「責任」という言葉を口にします。企業(JR東日本)だけじゃなく政府の「責任」も強調されていました。

というのも75年版『新幹線大爆破』では、国鉄と政府の上層部は終点博多での爆発を避けるため乗客を見捨てようとしたり、犯人逮捕優先のために乗客救助を報道しなかったりと、乗客やその家族に対する配慮は二の次。結果的に爆発は回避できて乗客は助かったからよかったじゃん?と開き直り、責任はうやむやにされたまま。そんな上層部の上辺だけの正義に嫌気がさした倉持指令長はこの日限りで辞職したのでした。

75年版の国鉄の汚名を返上するかのように、ネトフリ版のJR東日本は責任を貫き通しました。75年に倉持指令長が去ることでしか守れなかった”正義”が、50年後のJR東日本にはちゃんと根付いていた。

政府も、最初は前例がないと保身寄りでしたが、最後には「正義の政治」に踏み切って全面協力。

政府の決定に絶対の自信を持っていた総理大臣補佐官・佐々木なんて、指令所メンバーの熱意に感化され、現場の決断に政府を従わせようと180°方針転換しています。佐々木が言葉もなく頭を下げたとき、佐々木よく頑張ったよ…と胸にいたわりの謝意が込み上げました。

保身に走って国民が今求める決断を下さない政府への揶揄もあったと思いますが、”最終的に政府の堅物たちも心を動かされた”という王道な着地に持っていったストーリーは、感動的でありヒットの一因でもあると思います。

新幹線をいかにセクシーに撮るかのこだわり

ネトフリ版『新幹線大爆破』の樋口真嗣監督は、『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』を手がけ、自身も大の特撮ファンという特撮に生きる男庵野秀明監督とも仲が良く、エヴァの碇シンジは樋口監督に由来することでも有名です!

只ならぬ怪獣ファンを公言するだけあって、本作でも、はやぶさ60号を単なる車両じゃなく“生き物”としてどれだけ雄大でセクシーに撮るかにものすごいこだわりが見受けられました。

走っている60号を上から、横から、正面から、線路上から、あらゆる角度をご堪能くださいとばかりに映し出す。車体をゆったりとくねらせながらカーブを通過するショットには色気さえ感じます。

線路から昇る陽炎越しに大きく正面から捉えた60号が映るショットでは、モノであるはずの新幹線には本来存在しない生命感神秘性がうかがえます。事件は5月23日夕方で、陽炎が発生する時期と時間から少しズレていますが、特撮でよく使われる陽炎の演出は新幹線にぴったりだと思いました。

撮り鉄さんたちが通過する60号を一心不乱に激写する描写も印象的でした。ファンならそんなの絶対に撮りたいよな!!!あの撮り鉄さんたちは、謎の巨大怪獣が現れたときの樋口監督自身なんだろうと思いました。

青森駅から動き出す場面では、60号の車体下部(ヘビで言うとお腹の部分)を執拗に映しまくり、なんでここばっかり?普段見えないから?と不思議に思ったのですが、そういうことだったんですね!

「女がやるわけない」を逆手にとって

のんが松本運転手、これ以上ないキャスティングだと思いました。

終盤まで乗客と運転手の接触がなかったので、誰もこんな柔らかな雰囲気の若い女性が爆弾列車を運転しているなんて思わないじゃないですか!普通に平和な新幹線に乗ってても、運転手20代女性ですって言われたら驚くと思います。

乗客の前に松本が現れたときの、ほんの一瞬静まりかえった間に満ちた、「えっ、この子が運転手?」という驚き。癖のある女優だけど、ふわふわと自由なイメージが誰よりも強いのんだからこそギャップは大きかった。松本ちゃんすごいでしょ!誰にともなく自慢したい気持ちになりました。

75年版は、時代のせいもありますが国鉄や政府に女性職員は1人もいなかったのに比べ、ネトフリ版では女性は少ないけれど重要な役割を担って登場ました「時代を反映して女性も活躍させたい」との監督の目論見だったようです。運転手も女性。犯人も女の子。女性の車両部マネージャーも、男だらけの指令部内で佐々木にも怯まず堂々としたものでした。

女性に重要な仕事ができるわけがない、女性が国を揺るがす事件を起こせるはずがない、という1975年の当たり前から世の中の考え方が大幅にアップデートされた今でも、鉄道業界での女性の活躍は意外性があります。そしてすごくかっこいい!

「女性がやるわけない」というイメージを覆し、女性キャラの活躍によって作品に多様性を組み込んだことは現代のフェミニズムに沿っていていいなと思う反面、もうフィクションでもゴリッゴリの男社会を描くことはできないんだろうかと窮屈な気持ちも心に残ります。

柚月役の豊嶋花が先生の顔を満足げに見るときの表情は、トラウマになりそうなくらい不気味で。どこでこんな女優発掘してきたのかと思ったんですが、子役時代から表情演技を評価されていたそうで、これを演技の才能と言うのだろうと納得しました。きっとこれからいろんな作品引っ張りだこですね、楽しみ。

そして、古賀が振り向いたとき。思わず「お前かー!」と叫んでしまいました。日本中の悪いこと全部ピエール瀧がやってんな。

コナン映画「時計じかけの摩天楼」の電車爆破はここからきてる?

『新幹線大爆破』を見て思い出した映画があります。劇場版『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』!(以下、『摩天楼』)

『摩天楼』でも、時速60km未満で爆発する爆弾が東都環状線に仕掛けられ、電車は止まらずにノンストップで動き続けました。コナンは怪我で入院中でしたが、お見舞いに来ていた目暮警部を通して爆弾捜索に推理で貢献したのでした!

壁に路線図が伸びる指令室で、運行部長と司令長が運行ダイヤを無視してノンストップの決定を下すシーンといい、速度で爆発する条件といい、コナンのあれは1975年版『新幹線大爆破』からきてたのかも!と不意の発見に、嬉しい驚きでした。

Netflixリブート版『新幹線大爆破』考察・解説

【考察】柚月の口癖「せめてオスなら」の意味

古賀は取調べで、「せめてオスなら」が柚月の口癖だったと言っていました。

“男性”じゃなく、”オス”という言葉選びに引っ掛かります。口癖の意味を個人的解釈で深堀りしてみます。

男女がいう人間に対する性別なのに対して、オスメスは生物学上での性別で、どちらかというと動物に使うことが多い。オスという言葉に、父親不審で人間不審の柚月の人間に対する嫌悪と絶望が表れているように思います。

「せめてオスなら」をひっくり返すと、「メスだから今の状態になっている」と言えます。生物学上でオスメスの違いというと、身体能力や生殖機能です。

柚月の一番の憎しみの対象は父親でした。まず考えられるのは、父親とのあいだにオスメスの身体能力や生殖機能の差に起因する苦悩があったそれは柚月がオス(男性)だったなら防げていたことで、父親の暴力だったかもしれないし、性暴力だった可能性も捨てきれません。ただ、高市に触れられてもビクついたりとっさの拒絶反応を示したりはしていなかったので、身体的・精神的な暴力の線を推します。

柚月は友達がいないわけではありません。恋愛にSNSにおしゃれがある世界に生きる女生徒グループに属し、はぶかれることもなく、ちゃんと存在を認められていました。でもそれは、柚月が我慢と無理をして大丈夫そうに振る舞っていたから。柚月は女生徒たちに偽りの笑顔を見せて過ごしながら、自分のおかげで能天気で楽しそうに過ごしていける女生徒たち(メス)を軽蔑していたはずです。

女子高生の狭いコミュニティは、驚くほど残酷で、どうしようもないほど女の嫌な部分を孕んでいます。大人の女性社会と違うのは、それが無自覚なこと。自分たちの行動は純粋な心から来るもので正当性があると信じて疑いません。男生徒(オス)ならそんな煩わしさがなかったのに、という意味もあったでしょう。

柚月の口癖「せめてオスなら」の意味をまとめると…

父親から精神的・身体的暴力を受けていたが女の柚月には抗えなかった。女子生徒との人間関係にも疲弊していた。せめて男だったらどちらのストレスも負うことはなかったが、男女関係なく人間を軽蔑している柚月は、「せめて(生物学的に)オスなら(まだましだったのに)と思っていた。

ただ、柚月のインスタらしきSNS投稿からは暗い気持ちと自己陶酔が、「嘘の普通」というストレートなようで抽象的でピントの合わない表現からは幼さが感じられます。その「嘘の普通」を大人は思いやりや自制と呼ぶのですが。悩みの深刻さは違えど、柚月に中二病の一面があるのは確かです。

シンプルに、中二病期の言葉のセンスでの「せめてオスなら」だったかもしれませんね。

【考察】古賀の生い立ちと動機(爆弾もまた父の象徴)

1975年版の「ひかり109号事件」の犯人の一人・古賀勝の息子であり、柚月に爆弾の知識を与え犯行を手引きした古賀勝利という男について、作中で得られる情報から考えてみます。

古賀勝利の生い立ちについて

1975年版の「ひかり109号事件」の日に、古賀勝はダイナマイトを抱えて自爆。古賀勝は30代くらいに見えたため、父親が亡くなったとき、息子の古賀勝利はまだ少年だったと思います。

父親が大事件を起こしたとあれば、勝利は父親のことでひどい言葉を投げつけられ、嫌がらせも受けてきたことは想像に難くありません。幼少〜思春期にそんな経験をしてきた勝利は、苦悩を抱える一方で、父親に対して憎しみよりも強い憧れを抱いた。

なぜなら、大人になった勝利は発破技師(トンネル工事とかで火薬や爆薬で岩石・地盤を破砕するお仕事)をしています。

「新幹線は柚月にとって父親の象徴だ」と言ったように、勝利にとっては爆弾が父親の象徴です。父親が憎ければ、自分を苦しめるきっかけになった爆弾を仕事に選ぶわけがありません。父親を批判されればされるほど父親がやったことに惹かれ、憧れちゃったんですね。

父親を打ったことになっている小野寺勉が、自分の手柄だと吹聴し、父親の功績を汚すのを許せなかった勝利は、SNSのDMで柚月に接触し、爆弾の作り方を教えます。どうやって柚月のアカウントを見つけたのかは、想像ですが小野寺勉の家を突き止め柚月を張ったり検索したりして、とにかく頑張ったのでしょう!

古賀勝利の動機、義手だから柚月に託した?

勝利はなんのために、柚月に協力したのか。おそらく勝利の狙いは小野寺勉だけだった。新幹線を爆破することに関しては柚月の望みに沿ったのだと思います。

なぜ自分で小野寺勉に復讐しなかったのか、その理由は取調べ中に映された勝利の手元。作業着の右袖から義手がのぞいていました。仕事中の事故で右手を失ったと推測できます。右手を失った勝利には小野寺への復讐は難しく、無理をしてでも実行するほど強い復讐心ではなかったのでしょう。

ところが、小野寺勉の娘・柚月に出会った勝利は、柚月にシンパシーを感じてしまいます。自分たち古賀家を不幸に貶めたのは小野寺勉。小野寺家はさぞ幸せに暮らしているかと思いきや、その娘もまた父親のせいで苦しみの中にいる。そして、「生まれてきた意味さえ否定」される柚月に幼いころの自分を重ね、深く同調したと思います。

なぜなら取調べで古賀が語るのは、罪を逃れる主張や小野寺勉への復讐心よりも、柚月のことばかりでした。口調や表情からも、我欲よりも柚月への同情がうかがえます。

勝利にとって柚月の望みに協力することは、ひいては、誰にもわかってもらえない苦悩を抱えていた幼いころの自分に手を差し伸べることだったのかもしれません。

柚月と勝利の復讐は、小野寺勉が爆死したことで一応は成功しました。警察の保身のために1975年のひかり109事件の英雄に仕立てあげられ、犯人遺族だけじゃなく実の娘からも恨まれた挙句に爆殺される小野寺勉の人生、散々です…。

1975年版『新幹線大爆破』のあらすじ・リブート版との違い

1975年版『新幹線大爆破』のあらすじ

沖田哲夫(高倉健)は、会社の倒産をきっかけに人生は転落し、政府への復讐を企てる。東海道新幹線「ひかり109号」に時速80 km以下で走行すると爆発する爆弾を仕掛け、爆弾の解除方法を教える代わりに500万ドルを要求する。複数人からなるグループの犯行だと突き止めた警察は、徐々に犯人たちを追い詰めていく。沖田・古賀たち犯人側の友情や人間ドラマと、警察側の追走劇、爆発を防ぐ国鉄の奮闘が描かれる。

サスペンスとヒューマンドラマの要素が強く、車内パニックの様子や車両アクションは少なめですが、昭和らしい骨太で義理堅い人間ドラマが魅力です!

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セリフの途中でもカット切り替わり後に急に滝汗が出てたりと、つながりを無視した少々雑な作りはご愛嬌!笑

『新幹線大爆破』1975年版とNetflixリブート版の違う点

リブート版とは、オリジナル版の設定や世界観はそのままに生み出された新しい作品のこと。オリジナル版を現代技術や新たな解釈で作り直すリメイク版とは違います。

『新幹線大爆破』リブート版は、1975年版の「ひかり109号」から約50年後のお話で、1975年版犯人と血縁のある登場人物がいたりと繋がりがあります。

1975年版とリブート版の主な違い

1975年版リブート版
舞台東海道新幹線(東京〜博多)北海道・東北新幹線(新青森〜東京)
車両0系 ひかり109号E5系 はやぶさ60号
爆発速度時速80km以下時速100km以下
要求金額500万ドル(当時約15億円)1000億円
救出号での乗客救助技術的に不可最後尾を切り離して救出号を連結させ、乗客救助に成功
爆弾解除爆弾解除に成功し、乗客をのせたまま停車爆弾は解除できず9名を乗せたまま車両を切り離し、無人車両を分岐路線上で爆発させる
内容犯人vs警察と国鉄指令所
たまに車内
【サスペンス/ヒューマンドラマ】
はやぶさ60号とJR指令所
救出アクションがメイン
【アクション/ヒューマンドラマ】

リブート版では、60号に救出号を連結させ乗客を避難させました。1975年版ではその案は出たものの、当時は技術的に実行不可能でした。数十年を経て、その作戦を実行できるまで技術が進歩しているのは素晴らしいです!

内容はリブート版では車内の様子や、JR東日本指令所をはじめとする社員たちの奮闘など、新幹線関係に重点を置いて描かれています。1975年版では犯人vs警察の逃走追走劇をメインに、国鉄指令所など新幹線の外側で起きているドラマが描かれました。

Netflix『新幹線大爆破』主要登場人物・キャスト

JR東日本

【はやぶさ60号 乗務員】

高市和也(草彅剛)
– はやぶさ60号車掌。冷静で穏やかながら責任感が強く、車内のパニックや対応に全力であたる。

藤井慶次(細田佳央太)
– はやぶさ60号便乗車掌として乗車。若さゆえに感情的な部分もあるが、高市を見て車掌のあるべき姿に気がつく。

松本千花(のん)
– はやぶさ60号運転手。岩手県出身。爆弾報告以後、冗談を交えながらも集中を崩さない意志の強さがある。

二宮春香(大原優乃)
– 車内販売や乗客対応を行うアテンダントとしてはやぶさ60号に乗車。

【JR東日本 新幹線総合指令所】

笠置雄一(斎藤工)
– 新幹線総合指令所 統括指令長。正義感に満ち、冷静な判断で指令所から指示を与え、数秒単位の作戦を成功に導いた。

吉村慎之介(大場泰正)
– 新幹線総合指令本部長。JR東日本上層部や外部との交渉を担う。

山本由紀乃(西野恵未)
– 新幹線車両部マネージャー。指令所で、車両の構造・技術面から乗客救出作戦に貢献する。

【その他 JR東日本関係者】

福岡祐希(尾上松也)
– 新幹線総合車両センター主務。元運転手。はやぶさ60号を追走する救出号の運転を担当した。

新庄一(田中要次)
– 大宮新幹線技術センター副所長。東京駅で北海道東北新幹線〜東海道新幹線への延線作業を指揮。

はやぶさ60号乗客

加賀美裕子(尾野真千子)
– ママ活スキャンダルで批判を浴びた衆議院議員。青森での講演帰りではやぶさ60号に乗車していた。

林広大(黒田大輔)
– 加賀美の秘書。

等々力満(要潤)
– 元ニート起業家。車内から配信やテレビ出演、クラウドファウンディングを立ち上げ、情報を拡散する。

小野寺柚月(豊嶋花)
– はやぶさ60号に乗り合わせた修学旅行生。ひかり109号事件の捜査にあたった警察官・小野寺勉の娘。

市川さくら(大後寿々花)
– 柚月の通う臺葉工大附属高等学校の教員。柚月を追って救出号を離れ、はやぶさ60号に取り残される。

後藤正義(松尾諭)
– 観光ヘリ会社元社長。青森で小学校にヘリが墜落し、8名が亡くなる事故を起こしたばかり。

藤原圭造(六平直政)
– 電気工事士。車両連結解除に名乗りをあげ、連結解除作業に当たる。

その他 事件関係者

佐々木健太郎(田中健太郎)
– 総理大臣補佐官。新幹線総合指令所で、政府代表者としてJRと警察と協力して救出と解決に取り組む。

川越吉晴(田中健太郎)
– 警視庁捜査一課・特殊捜査係警部補。新幹線総合指令所で主に犯人との交渉を行い、犯人特定に尽力する。

諏訪茂(坂東彌十郎)
– 内閣官房長官。海外訪問中の総理に代わり、政府側の中心として会見や意思決定を行う。

小野寺勉(森達也)
– 1975年のひかり109号事件で犯人の一人・古賀勝を撃った英雄として表彰を受ける。実際は古賀が自爆死した事実を隠すための警察の粉飾である。柚月の父親。

古賀勝利(ピエール瀧)
– 1975年のひかり109号事件犯人の一人・古賀勝の息子。

 

Netflixリブート版『新幹線大爆破』作品情報

作品情報

⚫︎ 公開年:2025年
⚫︎ 尺:135分
⚫︎ 監督:樋口真嗣
⚫︎ 脚本:中川和博、大庭功睦
⚫︎ 撮影:一坪悠介、鈴木啓造
⚫︎ 音楽:岩崎太整、yuma yamaguchi
⚫︎ 英題:Bullet Train Explosion
⚫︎ 製作/配給:Netflix
樋口真嗣監督の主な作品
  • 『ローレライ』(2005年)
  • 『のぼうの城』(2012年)
  • 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年の実写映画)
  • 『シン•ゴジラ』(2016年)
  • 『シン•ウルトラマン』(2022年)

予告動画

 

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