ケータイ小説の生みの親・Yoshiによる『Dear Friends』を北川景子主演で映画化。
Yoshiといえば伝説のケータイ小説『Deep Love』が有名ですが、こちらは友情にスポットを当てた作品です。
ケータイ小説らしい、華やかな主人公がジェットコースターのように落ち、ボロボロになりながらも絶望から立ち上がるというお話。
北川景子が想像の100倍上をいくほどのボロボロ姿を晒した衝撃作!ネタバレ感想&考察でじっくりご紹介します。
記事内画像引用:ABEMA
本記事はネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎
映画『Dear Friends (ディアフレンズ)』の評価
※評価は主観によるものです
総合評価 2.6 / 5 点
評価コメント:北川景子を衝撃の坊主姿にした映画
あの衝撃はす…すごかったとしか言えない。絶頂キュート期の北川景子が、目も当てられないほどの姿を晒した本作。一度でも北川景子の明るい笑顔を画面で見たことがある方に、言葉もでないほどの衝撃を与えるパワーのある作品です。北川景子の絶望演技をぜひ一度見てほしい。重い気持ちにさせられる、好演です。
- 北川景子時代のSeventeen読者だった人
- ギャル全盛期の渋谷を知っている人・憧れていた人
- ケータイ小説で泣いたことがある人
- 2000年代の浜崎あゆみ・倖田來未の曲を歌える人
映画『Dear Frends (ディアフレンズ)』が視聴できる配信サービス
- U-NEXT
- Hulu
- ABEMA
- FOD(レンタル)
- Google Play(レンタル)
映画『Dear Frends (ディアフレンズ)』のネタバレあらすじ
17歳の高橋リナは、渋谷のクラブで“フロアの女王”と呼ばれるほどの美貌と存在感を持ち、誰よりも自由に夜を謳歌していた。だが、その華やかな姿の裏でリナは、人を信じることができず、「友達は必要なときだけ利用するもの」と言い切り、常に孤独を抱えていた。
そんなある日、かねてより体調の異変を感じていたリナは倒れてしまう。告げられた病名はガンだった。入院生活を余儀なくされたリナは、同級生・マキとの交流や新たな出会いを通じて、少しずつ心に変化を覚え始める。しかし、病は確実に進み、リナの輝きを奪っていくのだった。
そして、リナが初めて「友情」を感じたマキもまた、ある病気に侵されていた。
映画『Dear Friends (ディアフレンズ)』のネタバレ感想・見どころ
究極にシンプルな感動=ケータイ小説
本作はケータイ小説の祖・Yoshi原作『Dear Friends リナ&マキ』の映画化です。2000代半ば、彼氏とメールする方が大事だし読書なにそれ美味しいの?なカースト上位の女子こそ、夢中になってケータイ小説を読んでいました。
ケータイ小説といえば、「ちょっと不良な男女の恋愛」OR「 いじめられっ子が友情で救われる」+「ついでに誰か死ぬ」のお決まりパターン。人が感動できる、わかりやすくてドラマチックな要素を何もかも詰め込んだらこういう話になるんでしょう。本と映画で物語経験値を上げたいまは、あらすじを簡単になぞるだけでも、若い、青い、そして古い…と苦笑が込み上げてきてしまいます。
とはいえ、2000代半ばに一大ブームを巻き起こし、普段本を読まない女子たちに何万字もの活字を読ませたのは、「おもしろかったから」に他なりません。(レディ・バードがヒット曲をバカにするカイルに言った「ヒットしたのよ、文句ある?」が頭をよぎります…)
かくいう私もどっぷりハマっていた口。というか誰よりも率先して読んでいました。だっておもしろかったから!
「愛or友情」「絶望」難しい心理描写なんかなくても、私たちは、実はこれさえあれば感動できてしまう。そのことを立証した、究極にシンプルな物語が、ケータイ小説だったと思います。
今はもうファンタジーなあのころの渋谷
原作が発売されたのは2003年。当時の渋谷はギャルの街で、みんな金髪で、ピンクに紫に豹柄にヘソ出しミニスカで、ケータイはギラギラにデコって、酒タバコ援交ありの、パンピーにはちょっとこわい街…と、これは田舎の片隅で私が思い描いていた渋谷です。
とにかく、渋谷といえばキラキラでちょっとおっかない。だけど日本で一番、いまを楽しんでいる若者たちが集う街だったことは言うまでもない。
あれから20年以上たち、渋谷はハロウィンの日以外すっかりクリーンでおしゃれになりました。ギャルももう見当たらない。Popteenからも、すっかりギャル要素が消えてしまいました。いまのギャルはギャルじゃない!と90年代生まれは全員思っているはず。
本作の中にはあのころの渋谷ギャルのキラキラが詰まっています。主人公リナは17歳だけどクラブに出入りして酒も飲む。強め姉系ファッションに身をつつみ、部屋はピンクのゼブラ柄ベッドに黒いレースで飾ったドレッサー。そして部屋も言葉づかいも汚い、というか雑!
なぜか当時は、雑であるほど強そうでかっこよかったんですよね。地べたにも座るし、物だらけで雑然としたインテリアが素敵に見えていたし、くちゃくちゃガムは強そうに見せるための武装ですらあったから笑ってしまいます。
音楽にノッているというより直前に覚えた振り付けを頑張って踊っている風なクラブの女王でしたが、ギャルメイクでも素材のよさが桁違いなのがわかるくらい可愛いです。お顔のサイズが普通の人の半分しかないんじゃなかろうか…。

北川景子の坊主姿の衝撃
まばらに髪が残った頭の北川景子が、頭から離れない。全部髪の毛が抜け落ちた丸坊主より、こっちのほうがずっと衝撃的でした。そして、これが北川景子の初主演作品だというから驚きます。
本作公開年は2007年。北川景子はSeventeenは2006年に卒業したとはいえ、まだまだモデル活動も続けていたし、ティーン特有のキュートさが絶頂の時期でした。その時期に、初主演で、可愛さを脱ぎ捨ててあの姿を晒すことを決意した彼女の女優活動への覚悟よ。
ちなみに坊主やショートヘア姿のときはウィッグ着用で、実際に髪の毛を剃ってはいないそうです。
まだまだ演技は全体的にフレッシュな味わいでしたが、北川景子の絶望する演技は、生々しく悲痛でとてもよかったと思います。特に、終盤ラブホテルで一人泣き崩れるシーン。ほぼ何言ってるかわからないくらい、呼吸だけで精一杯そうでした。セリフよりお顔の映りより、自然に込み上げる苦しみをそのまま表現しようとしてるのが伝わります。
北川景子の絶望演技だけを見てほしくてこの作品をおすすめするくらい、光っています。
どういうことだヨウスケ
一体どういうことだ、ヨウスケ。お前の血は何色だ、ヨウスケ。
リナがどんな見た目になっても受け止める風なことを言っといてわずか数分後には、片胸のリナを見て「悪ぃ」と去るなんて!
さっき俺あれだけ豪語しちゃったし、ここで逃げるのはさすがに恥ずかしいなとか思わなかったんでしょうか。せめてホテル代は払って帰ったんだろうな。せめてあとでしつこいくらいに鬼謝罪したんだろうな。
髪の毛まばらなリナの姿は大丈夫だったのに、胸はだめなのもどうしてなの。どういう基準なの、ヨウスケ。
くさいセリフに青いカラコンで全力でかっこつけているのに、最高にかっこわるい男になってしまった。階段でのシーンはちょっと見直せそうだっただけに、残念です。
映画にクソ男は星の数ほどいますが、フォローのしようもないほど、こんなにダサい退場をした男はなかなかいないかも…。
すっ飛ばされすぎて正直共感はできない
マキもカナエも、リナを助ける理由を最後まで「友だちだから」一本で強引にねじ伏せました。リナもマキなしでは生きていけないほど信頼していました。
心理描写がだいぶすっ飛ばされているため、見る側は「なんで?急に?そんなに?」と置いてけぼり感があり、共感も感情移入もあまりできないというのが正直なところ。その途中の感情の動きを、もっと丁寧に教えてほしかった!
そして一番気になったのは、看護師二人の休憩室での会話。リナの担当じゃない方の看護師が、リナのガン転移を「天罰」と言いました。そりゃリナの態度は悪いけど、胸を全摘出の罰を受けなければないほど悪いことしたっけ?それも担当でもないあなた(天罰と言った看護師)に?と、すごく違和感がありました。
大したことないことでも「天罰」のように強い言葉を使って煽ることで、ストーリーにのジェットコースターのような落差が生まれます。それがケータイ小説のおもしろさなのも理解できる。けど、ケータイ小説のそんなところが苦手なのです。耳を疑ってしまうような言葉を平気で突然投げるキャラクターが多すぎて…。嫌な人だらけの中で、恋人や友人が光って見えるのは当然でしょうよと思ってしまいます。
世の中、こんなに嫌な人だらけじゃないと信じたい!
映画『Dear Friends (ディアフレンズ)』の考察・解説
リナはなぜ人間不信になったのか
物語前半では「友達は必要なときだけ利用するもの」と主張していたリナ。リナがこの考えに至った理由を考察します。
マキはリナの態度を「利用されるくらいなら、こっちから利用してやると思ったんだよね」と言っていました。過去に、リナ自身が友達に利用され、痛い目を見たことがあったのでしょう。
“利用”とは具体的になにかと考えると、まだ10代の女子高生のことなので、人間関係の足掛かりにされたり、嫉妬をぶつけられたり、恋愛でリナをめぐるトラブルになったりした結果、友達がリナの元から去っていったことを指していると考えられます。
誰もが羨む美貌のリナなので、美の恩恵を受けたい人が周りに自然と集まってくるのは想像に難くありません。その人たちに裏切られる回数が多く、落胆を重ねた結果、友達を無条件で信頼することを放棄した。これが友達不信の原因ではないでしょうか。
一方で、渋谷で孤立するデメリットもわかっていて、表面上の友達は必要だと思っている。そのため、エミのような、気安いタイプの友達もキープしていました。
リナがヨウスケと関係を持たなかった理由
VIPルームでヨウスケといい雰囲気になっても、セックスは拒絶していました。しかし、ヒロコの彼氏や他の友人の彼氏には手を出している様子。なぜカリスマで激モテのヨウスケはダメだったのでしょうか。
リナの容姿やクラブ女王のステータスを利用しようと群がってくる人はこれまでも数えきれず、リナは自然とそれを察知できるようになったのだと思います。一方、友達の彼氏たちはリナを純粋な憧れのまなざしで眺め、機会があったらやってみたいなーくらいに思っていた。性欲以外の、野心とかギラギラした欲が絡まないセックスがリナには気楽だったのかもしれません。
というわけでヨウスケは、最初は恋愛以外の感情も持ってリナに迫っていたことを見透かされ、拒まれのだと考えられます。
マキの病気の進行匂わせ描写
身体の自由がきかなくなっていく病気を抱えるマキ。リナの手術を堺にいきなりものすごいスピードで進行したかに見えましたが、マキが姿を見せなくなる前に2箇所、病気の症状をほのめかす描写がありました。
一つ目は、リナが検査入院を終えて退院する日。病院の玄関口でリナを見つけたマキが駆け寄り、つまずいて転倒しました。
二つ目は、リナがガン転移とカナエの死を知ってパニックになり、屋上に向かったとき。看護師と婦長の話を立ち聞きしたマキの手から、お菓子が落ちました。ショックの表現も含む思いますが、このころには手指の筋肉が動かしにくくなっていたと捉えられます。
北川景子写真集『Dear Frends』
映画公開と時を同じくして(写真集発売は2007年1/26、映画公開は2/3)、北川景子写真集『Dear Frends』も発売されています。北川景子20歳の写真を収めた写真集で、映画の撮影も同タイミング、20歳前後で行われていたと推測できます。
のち2013年に、北川景子は1st写真集として『27』を発売しているので、こちらは映画との連動企画として発売されたようです。
映画『Dear Friends (ディアフレンズ)』の主要登場人物・キャスト
高橋リナ(北川景子)
– 圧倒的な美貌を持つ17歳。クラブの女王として注目を集めるが、心を許せる友達はいない。ガンが発覚した。
遠藤マキ(本仮屋ユイカ)
–リナと同じ高校に通う。リナが入院した病院に通っているため、見舞いに来るようになる。
ヨウスケ(黄川田将也/現・黄川田 雅哉)
–海外で活躍するカリスマDJ。なかなか自分になびかないリナを気にしている。
カナエ(佐々木麻緒)
–病室でリナの隣のベッドに入院している少女。リナとは友達になる。
ヒロコ(通山愛理)
–高校生。リナに彼氏を寝取られるが、リナがクラブに来なくなってからは新・クラブの女王の座につく。
エミ(松嶋初音)
–クラブでリナとつるんでいる友人。お団子ヘアで軽いノリの元気ギャル。
婦長(大谷直子)
–リナが入院した病院の婦長。マキの病気のことも把握していて、マキとリナ両方を気にかけている。
幼少時代の高橋リナ(小林愛里香)
–小学生のころ、リナはマキに「友達だから」とオルゴールを授け、マキはその言葉を支えにし生きてきた。
高橋加奈子(宮崎美子)
–リナの母。過保護ぎみでおせっかいな部分もあり、リナに疎まれている。
高橋幸三(大杉漣)
–リナの父。リナには関心が薄く、リナのことは妻に任せている。
映画『Dear Friends (ディアフレンズ)』の作品情報
作品情報
公開年 | 2007年 |
尺 | 115分 |
監督 | 両沢和幸 |
脚本 | 両沢和幸、三浦有為子 |
原作 | Yoshi『Dear Friends リナ&マキ』 |
主題歌
SOULHEAD「Dear Friends」