映画『愛が微笑む時』ネタバレ感想&考察解説:隠れた名作ゴースト映画!B.B.キングが本人役で演奏

1993年公開の映画『愛が微笑む時』、私の大好きな映画です。

笑えて泣けて、一緒に音楽にのって楽しんで、何度も別れが続く映画なのに鑑了後は優しい気持ちになれる、隠れた名作。たくさんの人に気に入ってもらえる作品だと思います。

もっと知られるべき映画なのでみんな見てほしい!との一心で、ここで紹介させていただきます。

記事内画像引用:FOD , Apple TV

本記事はネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎

映画『愛が微笑む時』の評価

総合評価  4.1 / 5

評価コメント:なんでこれが知られてないの!? な隠れた名作

笑えて泣けて可愛いし恋愛も成就してみんなハッピー。女子が好きな要素をばっちり網羅した、優しい愛が詰まったゴースト映画。私個人的には、『ゴースト/ニューヨークの幻』にも負けず劣らずな名作と思っています。もっと知られてほしい!みんな見てほしい!この映画に元気をもらえる人はきっと多いと思います。騙されたと思って、ぜひ一度。

キャラクターは、作品に複雑な味わいをもたらすようなパンチある悪人が出てこない、ということで4点。でもキャラみんな良い!誰も悪い人がいなくて、人間の優しさをとことん堪能できます。

  • 90年代の恋愛映画が好きな人
  • 「ほっこり」したい人、涙腺が弱い人
  • 男の子を絶賛子育て中の人
  • サクッとハッピーになれる短め映画を探している人

映画『愛が微笑む時』が視聴できる配信サービス

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映画『愛が微笑む時』のネタバレなしあらすじ

1959年のサンフランシスコ。ある日、乗客4人を乗せたバスが事故で横転。4人は助からなかったが、魂は生まれたばかりの赤ん坊の中に取り込まれた。

その男の子・トーマスは、4人のゴーストに囲まれてすくすくと成長していった。ゴーストたちはトーマスをとにかく可愛がり、トーマスも彼らを「見えない友達」と呼び慕っている。しかし、トーマスの振る舞いを周囲の大人は不審がり、自分たちの存在が悪影響を与えていると悟ったゴーストたちはトーマスの前から姿を消した。

月日は流れ、トーマスは30歳になっていた。ゴーストたちは今もトーマスのそばにいるが、トーマスから彼らは見えない。

突然、ゴーストたちの前に天国から迎えにきたというバスが現れた。そして、やり残したことを一つすることを許され、トーマスに取り憑いたと知った4人は、迫るリミットを前に、最後の望みを叶えるため再びトーマスの前に姿を見せた。

映画『愛が微笑む時』のネタバレ感想・見どころ

ぜひ取り憑いてほしいゴースト部門1位

お茶目でキュートでノリが抜群によくて、トーマスを大好きすぎるゴーストが4人も味方だなんて!ゴーストが登場する映画は古今東西たくさんありますが、この4人が「私にも取り憑いてほしいな〜」部門1位です。

四者四様な性格だけど、ポジティブで優しい彼らは、罰とか未練のためこの世に残されているんじゃなく、本来天国に行くはずだったような善人たち。自らの死を受け入れ、ゴーストライフを楽しんでいるのがまた素敵。

一番ワルっぽいマイロでさえ、他の3人といい関係を築きトーマスを可愛がっています。心残りが、「少年に切手を返す」って言うのも可愛い。悪いやつほどいい行いをするといい人に見える、捨て犬とヤンキー理論!

トーマスの見えない友達であり、家族であり、師匠であり、親友悪友でもある彼ら。生まれたときからこんな4人が一緒にいたら、退屈な日なんてなさそう。

もしトーマスが大人になるまで彼らと一緒にいられたのだったら、トーマスは彼らの望みを叶える協力ができたかどうか。30年も続いた楽しい日々が急に終わってしまうなんて、辛すぎます。

幼いころに一旦離れて、彼らと精神的距離をあけることができていてよかった。おかげで別れを迎えてもトーマスの傷は浅く、エゴ抜きで友達のために動く、真っ直ぐな愛に溢れたストーリーになりました。

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4人とトーマスが『WALK LIKE A MAN』をノリノリで歌うシーンがすごく微笑ましくて大好き!

こんな別れなら何度でもしたい

望みを叶えたゴースト4人の晴れやかな表情。バスに飛び乗る足取りの軽やかさ。明るい別れは、こんなに爽やかな風を心に吹き込んでくれるんだ。

風通しのよくなった心なら、そのあと起こるいろいろも素敵に感じられるず。送る方も送られる方も前向きになれる別れなら、この先何度だってしたい。

数年周期で別れが訪れる学生時代と違って、大人になったいま、別れといえば恋愛の終わりだったりだったり、悲しいことのほうが多くなっていました。

「別れが人を成長させる」はもう耳タコくらい何度も聞いてきたけれど、できれば明るい別れだけで成長したい!せめて、家族や友人には感謝や好きとか明るい感情をちゃんと伝えておこうと思います。

楽しいときには歌を歌おう

4人とトーマスが『WALK LIKE A MAN』を歌うとこちらも楽しくて、「いいなあ〜」とニマニマしながら見ました。

もし彼らが笑顔でハイタッチとかしていても、まあ喜びは伝わっただろうけど、ここまで私も嬉しい気持ちにならなかったと思います。なんでこんなに感情移入できるんだろうと考えて、「歌って、感情を伝染させる媒介だ!」と思い当たりました。

歌う前提のミュージカル映画とは違って、今作の彼らは「喜びが込み上げて自然と」歌いはじめた。その自然さゆえに、私たちも歌=喜びを難なくキャッチできたんだと思います。

つまり、楽しいときや嬉しいとき、歌えば周りの人にもキラキラした感情をお裾分けできるということ!

普段から家では掃除中でもお風呂でも時かまわず歌って迷惑がられている私ですが、いいことがあった日は夫の横でノリノリで歌おうと思うのであります。

ジュリアの望みも叶えてあげてくれ

待って、ジュリアが報われていない、というか30年も彷徨って最後に得たのが「他人の幸せ」だなんて物足りなすぎない!?

他の3人はやり残したことをして、人生に追加得点を決めて天に昇っていったのに、ジュリアだけこれじゃちょっと可哀想。チャーミングでいい子なだけになおさら。

せめて、ジョンの遺品の中からジュリア写真入りロケットペンダントが見つかる、とか、ジュリアをハッピー加点してくれる何かがあってほしかった!

傷つくのが恐いから、が原因なのか

言葉や行動が足りない男性(女性もだけど)のみんながみんな、過去にトラウマがあって傷つくのを恐れているのだったらいいけど、現実には残念ながらそうじゃない場合のほうが多いんですよね…。

言わなくても伝わってると思ったとか、そこまで深刻に考えてると思わなかったとか。

それは相手の心情を想像することを放棄してる、怠惰だと思うんです。そう、我が夫、貴様のことだ!笑

トーマスは「信じていた人に置いてかれて、それなら一人で生きてやると思った」と言いましたが。

現実か妄想だったか定かではないトラウマを抱えて一人で生きるより、ずっと一緒にいられる人を見つけるほうが、得られるリターンが多くないかい?

それをしないのは、人との関わりが面倒だったからではないかい?

と、トーマスのトラウマ主張の奥に、少しの怠惰と手抜きを疑っています。

相手の”want”を想像するだけ、それだけでいいんだよ、トーマス。ジュリアのためにもアンと幸せになれよ。

映画『愛が微笑む時』の考察・解説

天使が背後から見守っている

4人を死後もゴーストとして地上に繋ぎ止めている神様の存在は、ほのめかされるだけで登場したり説明されることはありませんでした。

でも、作中の要所要所で、神様の代わりに天使が彼らを見守っています。

バスが迎えにきたときの植物園の天使像

トーマスとアンがランチデートに使った植物園。

ここでゴースト4人は、迎えにきたバス運転手から、やり残したことを一つできるチャンスやタイムリミットを聞かされました。

物語が大きく動くこの場面で、大きな天使像がまだ何も知らないトーマスと、ゴースト4人とバス運転手の応酬を見下ろしています。

マルコの家の外壁の天使も作戦会議に参加

マイロが切手シートを取り戻すため、マルコの家の外で作戦会議をする4人とトーマス。

その背後、マルコ邸外壁には天使の装飾が取り付けられていて、まるで天使も作戦会議に参加しているかのように背後から顔を覗かせます。

再び植物園の天使がトーマスとアンを見届ける

ゴースト4人全員を天に見送ったトーマスが、アンを呼び出したのは植物園。前回と同じ大きな天使像があるスペースです。

アンがやってくる前、天使像が画面の大部分を占有するアップショットで抜かれ、天使も彼らの局面を見守っていることが示唆されます。

トーマスがアンに本心を伝えたあと、キスを交わす2人が、ぐるぐる回転するスピンショットで映されます。その最中、天使像が一度だけ2人の頭上に見えます。

その際、天使像は存在感薄く映るよう調整されていて、もう2人が天使(神様)の干渉なしでも大丈夫になったとも捉えられます。


神様は天使をこんなふうにあらゆる場所に遣わせて、地上の出来事を把握しているのかもしれない、と想像を掻き立てる素敵な演出でした。

心の動きを強調する雨

雨はあらゆる作品で、感情、特に悲しみや憎しみを強調する役割を果たしています。

この作品では、ゴースト4人が幼いトーマスと別れる夜と、ジュリアがジョンの死を知ったときに雨が降りました。

後者では、ジュリアの悲しみと一緒に、トーマスのやり場ない怒りも強調されています。が、この雨が本当に強調したかったのはそのあと。

ジュリアが自分の心残りは、トーマスとアンのことだと気づく場面。雨があがり、暗い雲間から差し込む眩しい陽光がジュリアを輝かせます。

一瞬前まで暗く落ち込んでいたジュリアが、希望の光を取り戻す心の動きが、雨→晴れの空模様によってより印象的に描かれました。

ジュリアを失ったジョンは一人で生きることを選んだ

ジュリアの想い人ジョンは、ジュリアを失ったあと、思い出とともに1人で生きることを選んだと考えられます。

ジョンは7年前にもう亡くなっていると、ジョンから農場を買い取った現在の住人が教えてくれました。

それを知る前ジュリアは、「ジョンは別の人と結婚して家族がいるだろう」と言っていましたね。

でも、ジョンが亡くなる前の農場はひどい有り様で、ここを売ったあとジョンは1人で街のアパートに越したとのこと。

ジュリアは30年前当時20代半ばくらい。ジョンも同世代だと考えると、ジョンは50代半ば〜60代前半で亡くなりました。妻子がいたなら、住む場所や仕事を残してやろうとするでしょう。

つまり、病気のジョンや管理人不在の農場を世話する家族がいなかったということになります。

それはジュリアを失って塞ぎ込んだからなのか、生涯ジュリアだけに愛を誓ったからなのかはわかりませんが、ジョンがジュリアとの思い出を胸に過ごしたのは確かでしょう。

映画『愛が微笑む時』の主要登場人物・キャスト

トーマス・ライリー(ロバート・ダウニー・Jr /声:牛山茂)
– バス事故の日に生まれ、「見えない友達」のゴースト4人と育った。銀行マンでアンという恋人がいる。

ハリソン・ウィンズロー(チャールズ・グローディ/声:秋元洋介)
– オペラのオーディションに挑むがあがり症で歌えない。バス事故で死亡しゴーストに。

ジュリア(キーラ・セジウィック/声:一柳みる)
– 幼馴染のジョンを地元に残し、サンフランシスコでウエイトレスをしている。バス事故に巻き込まれる。

ペニー・ワシントン(アルフレ・ウッダード/声:深見梨加)
– 三児の母の黒人女性。ゴーストになったあとも子どもたちを気にかけている。

マイロ・ペック(トム・サイズモア/声:石塚運昇)
– 不良だが、少年から切手を巻き上げたことを後悔している。ゴーストになりトーマスに取り憑く。

ハル(デヴィッド・ペイマー /声:増岡弘)
– バスの運転手。事故を起こした罰として、冥界で500年間バス運転手をとして働いている。

アン(エリザベス・シュー /声:相沢恵子)
– バスの運転手。事故を起こした罰として、冥界で500年間バス運転手をさせられている。

7歳のトーマス(エリック・ロイド /声:大谷育江)

B.B.キング(本人役)

映画『愛が微笑む時』の作品情報

作品情報

⚫︎ 原題:Heart and Souls
⚫︎ 公開年:アメリカ 1993年 / 日本 1994年
⚫︎ 製作国:アメリカ
⚫︎ 尺:104分
⚫︎ 監督:ロン・アンダーウッド
⚫︎ 脚本:グレゴリー・ハンセン
⚫︎ 撮影:マイケル・ワトキンス
⚫︎ 音楽:マーク・シャイマン

主題歌

フォー・シーズンズ「Walk Like a Man」(邦題:恋のハリキリ・ボーイ)

挿入歌

スティーブン・ビショップ「マイ・ハート・アンド・ソウル」