Netflix『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』ネタバレ感想&考察解説|世界が推してる!圧倒的にクールな最強アイドル

KPOP文化、とりわけアイドルの世界的躍進は映画界でも止まらない!

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』を見てからというもの、作中のスーパーアイドル・Huntr/x(ハントリックス)に夢中です。

ライブ前には鼻の穴を膨らませ大口で爆食い、超クールな曲に合わせてラーメンのために手早くデーモンをボッコボコにする姿は、今までのアイドル映画とまるで違う!

ディズニー映画さながらの、くるくる変わる表情とコミカルな動きがとにかく可愛く、どのシーンも彼女たちから目が離せません。

日本に”可愛い”アイドル作品はたくさんありますが、海外発のアイドル作品の、可愛いだけじゃない圧倒的なパワー。一度、体感する価値ありです!

本記事は感想にネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎

Netflix映画『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の評価

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総合評価  3.9 / 5

評価コメント:完璧じゃないことを許されたHuntr/xはアイドル界の希望だ

作中のアイドルHuntr/xは従来の「理想のアイドル像」に縛られず、素の姿や欠点すら魅力として認められた、異例のアイドルである。

清純で素行良し、ファンの望み通りの振る舞いが良しとされる日本のアイドルとは全く違う、アイドルの捉え方が新鮮で眩しく感じられた。

ヒロインたちは他者からの理解や自己受容を通じて強さを得ていく。「ありのままの自分を認めよう」というシンプルなメッセージは、ストーリーの根幹となっている。

KPOPらしいクールな楽曲が魅力で、劇中歌「Golden」は米ビルボードHOT100で1位を獲得するなど高い評価を受けている。

肝心なところの説明が足りなかったり、掘り下げ不足の部分もあるが、続編への期待が高まる内容だった。

  • 日本のアイドルよりKPOPグループが好きな人
  • いい感じの洋楽を探している人
  • 海外アニメ作品のコミカルさとスピード感が好きな人
  • 休日はジャンクフードや炭水化物を食べて、ダラダラしたい人

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』ネタバレなしあらすじ

この世界には、人間界とは別に魔界が存在している。魔界の住民であるデーモンたちは人間たちの魂を襲い、王・グウィマに捧げていた。

古来から三人の少女たちが、デーモンたちと闘うデーモン・ハンターとなり、歌の力で結界(ホンムーン)を張り、世界の平和を守ってきた。

KPOPアイドルグループ「Huntr/x」(以下、ハントリックス)」の3人ルミ、ミラ、ゾーイは、人気絶頂のスーパーアイドルとして活躍する傍ら、ハンターとしてデーモンたちと闘う忙しい日々を送っている。

ホンムーンは完成間近で、餌となる魂を十分に得られないグウィマは衰弱している。世界に完全な平和が訪れるまであと一歩のところまできた。

しかし、ルミには他の2人には隠している、重大な秘密があった。ルミは先代ハンターの母とデーモンの父との間に産まれた、デーモンの血を引く子なのだ。今やルミの身体にはデーモン特有の模様が、隠しきれないほど広がっている。それが原因で声にも不調をきたしていた。

一方、魔界ではデーモン5名によるKPOPアイドルグループ「Saja Boys(サジャボーイズ)」が結成された。ホンムーンの力の源であるファンをハントリックスから奪い、結界の守りの力を弱らせる作戦である。

サジャボーイズがデーモンだと気付いたハントリックスは、隙をついて討伐しようとするが、いつも彼らのペースに持ち込まれ、躱されてしまう。

サジャボーイズの一人・ジヌは、戦闘中にルミの身体の模様を目撃し、ルミがデーモンの血族だと見破る。ルミは不本意ながらジヌとの交流を続けるうちに安らぎを感じ、ホンムーンを完成させてグウィマの支配からジヌを解放するため、協力する道を選ぶ。

 

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』ネタバレあり感想

“アイドルらしからぬ”を許された異例のアイドル

アイドルほど抑圧された職業はない。

アイドルたるものこうあるべきという「理想のアイドル像」に近ければ近いほど人気が出る傾向は、おそらく日本にアイドルが誕生してからずっと変わらない。

でもハントリックスは、「自分らしく」いることを許された、型破りで異例のアイドル!

ファンは彼女たちに可憐な微笑みや従順な振る舞いなど求めない。彼女たちに見せてほしいのはただ一つ、圧倒的なパフォーマンス。最高にクールな歌とダンスが武器の彼女たちにおいては、素行不良や暗い過去さえも美点だ。

マナーも美意識も無視した爆食いも、仕事のあとの怠惰な休息も、彼女たちにとっては誰の許可を得る必要もなく、当然の行動として許されたこと。

体型を気にしておやつはナッツやフルーツ少量、意識高い休日の様子をブログやSNSにのせ、いかにプライベートでも一生懸命アイドルらしく生きているかをアピールする必要などない。

ファンや運営上部など、他者が求める「アイドル像」に合わせずに、自分らしくアイドルとしていられたらどれだけ身軽なことだろう。そのかわりに、常に最高のパフォーマンスを届ける。

のびやかで健康的な心が、ハントリックスのパワーの源になっていることは作中で徹底して明示されていた。それが、本作が掲げる「アイドルはこうあるべき像」なのだ。アイドルちゃんたちよ、心が欲するときは山盛りスナックとカップラーメンを食べるのです…。

アイドルが登場する作品は日本にもたくさんある。現実のアイドルに比べればだいぶ個性豊かで自由なものの、苦境に負けずに努力する過程や、いかなるときも素直で一生懸命な人間性が、やはり好まれるのは否めない。

アイドルを”偶像”ではなく”個人”として捉える見方が、まるで日本と違うのがすごく新鮮で印象的だった。

ヒロインは「被受容感」と「自己受容」で強くなる

本作の「自分をありのまま認めよう」という、ごくシンプルながら自己啓発的で力強いメッセージ。自然と脳内にあの雪の国のプリンセスの高らかな歌声が流れてくる。

倒すべき敵は魔王・グウィマだが、ルミにとって一番の障壁となっていたのは、育ての親・セリーヌの「欠点や恐れ、過ち、涙は見せてはならない」という教えだった。

デーモンの血を引くことに対してセリーヌから部分的な拒絶を感じていたルミは、ジヌにデーモンの血族だと認められて安らぎを得た。

「デーモンであることは隠し通せ」というセリーヌに、ルミは「うるせえ、もう世界なんてぶっ壊す!」とブチ切れ、ついに自己受容の境地に辿り着いた。

セリーヌの教えとは真逆の、人に見せるべきではないと思っているダメな部分を見せた先に、被受容感や自己受容が待っていたのは皮肉だ。

完璧な人=強い人ではなく、自分にとっての完璧が他人にとっても完璧とは限らない。ダメダメな今のままでも案外、すんなり受け入れてもらえる可能性もある。ただ、欠点や過ちを笑って自虐ネタにできる人が、強い人であることは確かだ。

キラキラアイドル曲という日本独自の文化

キッズ向けな絵柄のアニメ映画にも関わらず、意外にも大人にぶすぶす刺さった理由は、なんと言っても曲のよさだろう。

2025年6月下旬の公開からジワジワとファンを獲得し、8月16日には劇中歌「Golden」が米ビルボードのシングルチャート『HOT100』で1位を獲得し、その週にアメリカで一番聞かれた曲になった。

どの曲もいい意味でアニメ・アイドル感がなく、普通にポップソングとしての出来がいい。すごくいい。

こうしてハントリックスが世界で評価されるのは、アイドルというフィルターなど抜きに、いちアーティストとして優れている証だ。

一方、日本のアイドル曲やアニソンは、曲の良し悪しより「可愛くてキャッチーかどうか」の比重が大きい。私はそれも好きだけれど、聞く人を選ぶのは否めない。00年代からわずか四半世紀で急速に発達した、日本独自の文化だと思う。

2023年には米ビルボードのグローバルチャートでYOASOBI「アイドル」が1位になった。先日2025年8月23日付のアルバムチャートでBABYMETALが9位に入った。BABYMETALは日本のアイドルらしいアイドルとは少し違うが、ビルボード1位にいま一番近いアイドルは、BABYMETALで間違いない。

そして願わくば、いつか日本独自の進化を続けるキラキラアイドルたちが全米1位に輝く日を…。

知りたいところを教えてくれない歯痒さ

「選ばれし三人の少女がデーモンと闘う」という簡潔なストーリーは、キッズも見ることを考えれば、これくらいわかりやすくてちょうどいいと思う。

気になったり、掘り下げればおもしろそうな箇所の説明が少なかったりあっさり流されてしまったため、釈然としない感覚が残るのが惜しいところ。

  • どうやってデーモンハンターに選ばれるの?
  • デーモンはあんなにいるのに、ハンターチームはセリーヌを含めても4人だけ?
  • グウィマは今は弱体化しているから実態のないモヤモヤな存在なの?
  • ルミの父と母については?

もしこのヒットを受けて続編が作られるなら、世界観がより克明に開示されると大変うれしい。時代を変えて過去編もいいし、ルミ父母が結ばれて離れるに至るまでの悲しい話もありかもしれない。

韓国の文化をベースにした世界観が興味深く、韓国(朝鮮)の土着文化に触れられる作品をいくつか見てみようと思った。ひとまず『破墓』からいこう。

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の考察解説

【考察】絶望したルミが闇堕ちせずに民衆を救済できた理由

ミラ・ゾーイにデーモンだとバレて拒絶され、セリーヌからも存在の一部を否定され、絶望したルミは「もう世界なんてぶっ壊してやる!」と言って、デーモンのオーラを強めた。

サジャボーイズの作戦の総仕上げであるコンサート会場に現れたルミの生気のない声に、ルミの闇堕ちを覚悟した人は多かったはず。

しかし、ルミが発したか細く震える歌声は、催眠状態のミラとゾーイの目を覚まさせ、ハントリックスは結束を取り戻した。

ついさっきまで絶望していたルミが、民衆を救う力を取り戻したのは、「自己受容」によって自分の存在意義への迷いがなくなったからだろう。

「デーモンであることは隠さなければいけない」というセリーヌの教えは、ルミを不安に縛り付ける足枷となっていた。セリーヌとの決別によって、ルミは自分のデーモンの部分を認め、自らを完全に受け入れることができた。

正義感の強いセリーヌはある意味ではルミにとって毒親であり、セリーヌとの別れはルミが通過するべき巣立ちでもあった。

【考察】デーモンの分類|人間型とモンスター型

作中ではいろんなデーモンが登場しましたが、デーモンについては生態や成り立ちなど、ほぼ言及されなかったので、映像やストーリーから汲み取れることを整理します。

 デーモンには人間型とモンスター型がいる

デーモンにはおそらく階級による見た目の差があり、以下のように分類できる。

無形 魔王グウィマ … 炎かガスのようなモヤモヤ、実態はないが自在に形は変えられる

人間型 サジャボーイズ。ジヌのような、元人間のデーモンがこの人間型タイプなのかもしれない。

モンスター型 一つ目で角があるモンスター型のデーモンで人間に化けることができる。大型〜小型まで様々、男女どちらもいるようだ。

量産型 顔も個性もなく、全身真っ黒。モンスター型に使役される駒のような存在。デーモンなのかは不明だが、人間の魂を吸い取ることができる。

サジャボーイズだけ、明らかに等身も知能も違う。

後述するように、ジヌは元々人間であり、グウィマに唆されてデーモンになった。サジャボーイズの他のメンバーも同様に、人間からデーモンになったクチかもしれない。

ハンター(人間)であるルミの母と結ばれた、デーモンの父もこの人間型タイプで、ジヌのように人間の心を残していたのだろう。

 さらに、元人間デーモンと血統デーモンがいる

デーモンには、ジヌのように元々人間だったがグウィマの策略でデーモン堕ちした元人間デーモンと、デーモンの親を持つ血統デーモンがいる。

ジヌは400年前に、グウィマに漬け込まれて家族を捨てて雅楽家として王宮に入り、名声と安住の環境を手にした。グウィマに支配されたジヌはデーモンと化し、後悔と罪悪感は身体にデーモンの模様として現れた。

しかし、ルミの腕に浮かぶデーモンの模様を見たジヌは、すぐにルミは「デーモンの血を引いている」と理解した。

ルミが人間からデーモン堕ちした可能性を疑わないということは、今はもうグウィマは人間を唆して魔界に引き入れることはしておらず、元人間デーモンは魔界でもかなり希少な存在なのだろう。

グウィマは元人間デーモンに魔力と長寿を与えるのはいいが、人間的な感情は奪い、グウィマに忠誠を誓わせるべきだったのではないか。

そしてグウィマは、見た目もモヤモヤだし魔王らしくないけれど、人間の魂をたくさん取り込んで本来の力を取り戻したら、見るからに王!な実体に変わったりするんだろうか…?

 

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』主なキャラクター・声優

Huntr/x

ルミ(声:(英)アーデン・チョ / (吹替)寿美奈子、歌唱:(英)EJAE / (吹替)堤育子)
– 圧倒的な歌唱力を誇るハントリックスのリーダー。元アイドルでハンターの母とデーモンの父との間に生まれた。

ミラ(声:(英)メイ・ホン / (吹替)田村睦心、歌唱:(英)オードリー・ヌナ / (吹替)MARU)
– ダンスとビジュアル担当、クールでサバサバしている。幼少期から問題児として扱われ、家族とも不仲。

ゾーイ(声:(英)ユ・ジヨン / (吹替))渡谷美帆、歌唱:(英)レイ・アミ / (吹替)横山愛実)
– グループのマンネ(妹)の愛されキャラだが、キレのあるラップが持ち味。アメリカ育ち。リリックをノートに書き溜めている。

Saja Boys

ジヌ(声:(英)アン・ヒョソプ / (吹替)石川界人、歌唱:(英)アンドリュー・チェ / (吹替)藤正裕太)
– サジャボーイズのリーダーでアイドル作戦の発案者。元は人間で、ある後悔を抱えている。

アビー(声:チョ・ソンウォン 、歌唱:Neckwav)
– バッキバキの腹筋でファンを魅了する筋肉美ダンサー。

ミステリー(声:アラン・リー 、歌唱:ケビン・ウー)
– 前髪で顔を隠したミステリアス男子。前髪に隠された顔はゾーイ曰く「美男子」。

ロマンス(声:ジョエル・キム・ブースター 、歌唱:samUIL Lee)
– 甘い言葉と行動でファンを虜にする。ピンクのロングヘアで前髪はハート型になっている。

ベイビー(声:未公開 、歌唱:ダニー・チャン)
– ベビーフェイスと何か企んでいそうな眼差しがギャップの末っ子キャラ。激辛ソースを難なく飲み干す。

 

グウィマ(声:(英)イ・ビョンホン / (吹替)土田大)
– 魔王。人の心入り込み声を聞かせることができる。人間の魂を食べて力を得る。

セリーヌ(声:(英)キム・ユンジン / (吹替)樋口あかり、歌唱:レア・サロンガ)
– 旧友だったルミの母が亡くなったあと、ルミを引きとって育てた元ハンター。

ボビー(声:(英)ケン・チョン / (吹替)虎島貴明)
– ハントリックスのマネージャー。お調子者だが、仕事は一生懸命でメンバーにとても優しい。

 

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』作品情報

作品情報

⚫︎ 配信開始日:2025年6月20日
⚫︎ 製作国:アメリカ
⚫︎ 尺:96分
⚫︎ 監督:マギー・カン、クリス・アッペルハンス
⚫︎ 脚本:ダニヤ・ヒメネス、ハンナ・マクメチャン、マギー・カン、クリス・アッペルハンス
⚫︎ 音楽:マーセロ・ザーボス
⚫︎ 製作:ソニー・ピクチャーズ・アニメーション
⚫︎ 原題:KPop Demon Hunters

劇中歌

米ビルボード1位獲得 Huntr/x「GOLDEN」

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