映画『ジュリエットからの手紙』ネタバレ感想&見どころ解説|50年前の元彼を探す夏のイタリア旅

10代の夏って、楽しくて充実感と希望でいっぱいな、人生で一番瑞々しい瞬間だと思うんです。

大人の夏はすぐバテるし、エアコンで喉と肌がやられるし、紫外線や脂肪が気になって薄着に手が出せなくなったし、大変つらいです。笑

でも、大人のみなさんも安心してください!『ジュリエットからの手紙』を見たら、心は10代に若返ります。

10代のころにこの作品と出会えたら、ときめきと希望を胸いっぱい吸収して、イタリアの明るい空の下に飛び出していってしまいそうな、心の栄養になる映画です。

本記事は感想にネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎

映画『ジュリエットからの手紙』の評価

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総合評価  3.3 / 5

評価コメント:夏休み中に食べるマスカットジェラートの味

イタリアのまばゆい夏空の下、おばあちゃんが50年前に別れた彼と再会する旅に出ます。

もう生きていないかもしれないし、自分のことなんて忘れているかもしれない。運命の恋だと思っていたのは自分だけだったんじゃないか…という不安を押し殺して、ロレンツォ(同性同名が74人もいる)を探します。

おばあちゃんが昔の恋にときめく様子が、若者となんら変わらなくて、甘酸っぱーーーい。恋する老人たちの若々しさに驚きます。

引きの映像でたっぷり映し出される、夏のイタリアの景色も綺麗。夏の恋の楽しさとイタリアの魅力が映像から伝わって、じゅわじゅわと心に沁みていきます。

『ジュリエットからの手紙』を見たら、いつかイタリアでカップルでジェラート食べよう!

  • 10代のころに別れた相手の現在が気になる人
  • ロミオとジュリエットを読んだ or 見たことがある人
  • 結局イタリアンが一番美味しいよって人
  • ロングドライブ旅行好きな人
  • 海外旅行行きたいけど行く予定はない人

 

映画『ジュリエットからの手紙』が視聴できるサービス

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映画『ジュリエットからの手紙』ネタバレなしあらすじ

ライター志望のソフィー(アマンダ・セイフライド)は、婚約者ヴィクターとプレハネムーンでイタリア・ヴェローチェに訪れた。

NYでイタリアンレストランを開店間近のヴィクターは旅行中も仕事に忙しく、暇を持て余したソフィーは、ジュリエットの家に届けられた手紙に返事を書く「ジュリエットの秘書」の存在を知る。

ソフィーは偶然見つけた50年前の手紙に返事を書くと、すぐに手紙の主・クレアが孫・チャーリーを連れてイギリスからはるばるベローチェに駆けつけてきた。

クレアが50年前にベローチェで出会い、別れてしまったロレンツォを探し出し、一言謝りたいのだと言う。しかし、手がかりは「ロレンツォは今もベローチェに住んでいる気がする」というクレアの直感だけ。さらにベローチェ市内にはロレンツォと同姓同名の男性が74人もいる。

クレアとロレンツォの再会の奇跡を記事にするため、ソフィーはロレンツォ探しの旅に同行する。

映画『ジュリエットからの手紙』ネタバレあり感想

ラブコメ嫌いでもこれはあり

私はラブコメ映画って結構苦手なんですが、この作品は思いのほか楽しめました!

恋愛脳の生意気がんばりガールが、愛の名のもとになりふり構わず無責任に周囲を振り回すご都合ラブコメには、感動より苛立ちを覚えてしまいます。本当にそれは真実の愛?浮かれてるだけじゃない?と。

でも、本作で愛する人を追いかけるのは、白髪の老婦人クレア。

長いこと我慢して、夫を見送り子育ての責任も果たし終えた老女が、「彼に一言謝りたい」と50年前の大恋愛の相手を探すのに、なんの文句がありましょうか。

ロレンツォを見つけた時のクレアの頭の中のスパーク、震え、発汗が想像できます。恋に若い老いは関係ない。

お互いの孫に見守られながら手にした50年の熟成を経た愛も、心から祝福できるのでした。

恋する人たちが、落ち着きも節度もある大人だったのが、好ましかったです。唯一、ヴィクターだけがラブコメのお決まりダメ彼氏で浮いていた。笑

クレア役のヴァネッサ・レッドグレイヴとロレンツォ役のフランコ・ネロは私生活でも夫婦です。素敵〜

見習いたいイタリア男のコミュ力

イタリアの景色や街並みが魅力的なのはさる事ながら、イタリア人男性のコミュ力の高さに驚き、関心しました。

ロレンツォを探し回る過程で出会った人たちの、言語化力、伝える度胸、自信!

日本人だったら、「いえ、私じゃないです」だけで終わりそうなところを、イタリア紳士たちは人違いに対しての同情を伝え、クレアの魅力を褒め、クレアを口説くまでをワンセットにして投げ返します。

ロレンツォが、クレアと再会した喜びを語った「老人として乗馬に出かけ、10代として戻った」には痺れました。「愛してる」も「嬉しい」も使わずに、心は再会の喜びに打ち震えていることを伝えています。

イタリア男がプレイボーイなのは女狂いなんじゃなく、きっとモテすぎるんだ…!

人と関わることを苦にせず、思ったことを巧みな言い回しでストレートに伝えるイタリア人。もちろんそうじゃない人もいるだろうけど、コミュニケーション苦手民が見習うべきはイタリア人なのかも。

チャーリー or ヴィクターの二択だったら

どっちを選びますか?

彼女の話をまるで聞かねえヴィクターが論外なのは当然として、学歴能力主義で出会い頭からソフィーをおバカアメリカ女と見下すチャーリーもなかなかです。

旅を共にする中で、チャーリーの素顔が明らかに…なりはしましたが、明らかになったのは、「両親亡くした自分可哀想」と「俺仕事できっから」と「元カノは俺からフッてやったから」の、エゴイズム。

ばあちゃん思いなのは素敵だけれど、それだけじゃ惹かれる理由には弱い。

ラブストーリーだから、ソフィーとチャーリーはぜひくっつくべきだし、素直に喜ばしいと思えますが

選びたいのは、チャーリーもヴィクターよりも、ロレンツォ!

日本の恋愛映画も旅したらいいのに

車のCMか!と思うほどロングショットの連続する本作。イタリアの綺麗な風景が遠くまで、画面いっぱい堪能できました。

海外の旅恋愛映画は、ストーリーよりも映像を楽しむ画面旅行だと思っています。

そういえば、日本の恋愛映画で旅する作品ってあまりないな〜と、ふと思いました。

どこか地方の街を舞台にした作品はたくさんあるけれど、それはそこにもともと住んでいる人の話だったり、引っ越してきた人や旅人が住民のコミュニティに混ざって何かするお話。

旅行者同士が旅の期間に恋人関係になるパターンは、私が思い出せる限り、向井理と中山美穂の『新しい靴を買わなくちゃ』くらい。それも舞台は日本ではなく、パリです。

日本の旅行は、週末だったり長期休みの中の数日を利用した1泊〜2泊の短期旅行が主流だから、どうしても旅行中に恋愛に発展するまでいかないのでしょう。

でも、海外の旅映画みたいに、日本国内の綺麗な風景とか魅力的な街を作品の中で見たいから、日本の恋愛映画も旅してほしいなと思います。海外の恋愛映画制作チームさん、ぜひ日本を舞台に一本お願いします。

【考察】原題と邦題の違い

原題が「Letters to Juliet」に対して、邦題は「ジュリエットからの手紙」。

両者を比べると手紙の向き、つまり手紙の差出人が違うんですよね。

これは、ジュリエットに手紙を出した数多の女性の中から、クレア一人にフォーカスするためでしょう。

作中でジュリエットに手紙を書いたのはジュリエットの家を訪れた世界中の大勢の女性で、クレアもその一人なわけです。原題の「ジュリエットへの手紙」だと、対象となる女性がたくさんいる。

一方、邦題「ジュリエットからの手紙」だと、作中でジュリエットから手紙を受け取ったのはクレアだけなので、クレアに焦点が当たることになります。

原題と邦題で意味が真逆になる、おもしろい例です!

映画『ジュリエットからの手紙』見どころ解説

見どころ①:チャーリーとヴィクターを対比する背景の景色

ソフィーの婚約者・ヴィクターと、クレアの孫・チャーリー。二人がクレアとってどんな存在か、背景で対比されていました。

ヴィクターとソフィーの背景は、いつも細い通りやホテルの狭い部屋。薄暗くて背後にはすぐ壁が迫り、ヴィクターと一緒にいるとソフィーの心は窮屈なことが示唆されています。

チャーリーとソフィーの背景は、広大な大地や空が開けた空間が圧倒的に多い。ホテルの部屋も広く、狭い車の中でさえバックミラーに映るソフィーの背後には長い道が続いています。

チャーリーといる時のソフィーは、のびのびと素のままでいられることがわかります。

見どころ②:本家ロミオとジュリエットとの重なり

『ロミオとジュリエット』(以下ロミジュリ)はシェイクスピア原作と思われがちですが、実は14世紀初頭にイタリア・ベローチェで実際にあった史実を元にイタリアの複数の作家が小説にした作品です。

その後16世紀イギリスで、それをベースにシェイクスピアが戯曲にしました。

ロミジュリはいろんな監督が映画やドラマにしていますが、1996年のディカプリオ主演映画版が特に有名です。

本作には、ロミジュリとの共通点やオマージュだと思われる点がいくつかあります!

本作とロミジュリとの共通点

⚫︎50年前、クレアと駆け落ちしようとした男性の名前はロレンツォ
→ ロミジュリで、ロミオとジュリエットの駆け落ちに手助けした神父の名前がロレンツォ

⚫︎ソフィーは婚約、チャーリーは恋人と結婚式に参列と思ってすれ違う二人
→ ロミジュリでは、ジュリエットが死んだと思って後追い死したロミオ。すれ違いによる悲しい結末が描かれる。

⚫︎ソフィーとチャーリーはバルコニーで愛を打ち明ける
→ ロミジュリでは、バルコニーに立つジュリエットと、庭から見上げるロミオが愛を語り合う。

ロミオとジュリエットに詳しい方、ぜひほかにも探してみてください!

本当に手紙に返事が来る!観光名所・ジュリエットの家

イタリア・ヴェローナにあるジュリエットの家(Casa di Giulietta)は、『ロミオとジュリエット』の舞台とされ、多くの恋人たちが訪れる人気観光地です。

14世紀に建てられたカプレーティ家の邸宅で、「ジュリエットの家」として観光名所になったのは20世紀以降。

超有名なバルコニー

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ロミオとジュリエットが愛を打ち明け合ったバルコニーは、長蛇の列ができる人気フォトスポットです!

実はシェイクスピアの書いた戯曲にはバルコニーは登場せず、その後の舞台や映像作品でバルコニーが使われるようになりました。ジュリエットの家のバルコニーは、観光客人気を受けて後から増築したものです。

ジュリエットのポスト

恋の悩みを綴った手紙を投函できる「ジュリエットのポスト」も実際にあり、年間5,000通の手紙が届きます。本作公開後は手紙が8倍に増えたとか!

手紙にお返事を書くボランティアの「ジュリエットの秘書」も実在します。年に1回、一番思いのこもった手紙がベローチェ市によって表彰されます。

右胸を触ると幸せになれるジュリエット像

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ジュリエットの家の中庭には、ジュリエットのブロンズ像があり、ジュリエット像の右胸に触ると幸せになれると言われています。

本作でも、観光客のおじさんがジュリエットの右胸に触っておどけているシーンがありました。

ジンクスを知らなかった私は、「このすけべオヤジ…笑」と思ったのですが、そういうことだったんですね〜!

映画『ジュリエットからの手紙』主な登場人物・キャスト

ソフィー・ホール(アマンダ・セイフライド)
– NY在住でライター志望。婚約者のヴィクターとプレハネムーンに訪れたヴェローチェで、ジュリエットの秘書たちと出会う。

クレア・スミス=ワイマン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)
– 50年前にヴェローチェでジュリエットの家に手紙を隠しイギリスに帰国。ソフィーが書いた返事をきっかけに、ロレンツォを探しにやってきた。

チャーリー・ワイマン(クリストファー・イーガン)
– 祖母のクレアに付き添ってベローチェにやってきた。祖母を思うあまり、ソフィーの返事を迷惑がっている。

ヴィクター(ガエル・ガルシア・ベルナル)
– ソフィーの婚約者。NYでイタリア料理店を出店するため多忙で、プレハネムーン中も仕事優先。

ロレンツォ・バルトリーニ(フランコ・ネロ)
– 50年前にベローチェでクレアと愛し合い、駆け落ちを計画するが叶わなかった。

映画『ジュリエットからの手紙』作品情報

作品情報

⚫︎ 公開年:2010年/日本2011年
⚫︎ 製作国:アメリカ
⚫︎ 尺:105分
⚫︎ 監督:ゲイリー・ウィニック
⚫︎ 脚本:ティム・サリヴァン、ホセ・リベーラ
⚫︎ 撮影:マルコ・ポンテコルヴォ
⚫︎ 音楽:アンドレア・グエラ
⚫︎ 原題:Letters to Juliet
ゲイリー・ウィニック監督の主な作品
  • 『13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ』(2004年)
  • 『シャーロットのおくりもの』(2006年)
  • 『ブライダル・ウォーズ』(2009年)

予告動画

挿入歌

テイラー・スウィフト「Love Story」

 

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