映画『サンセット・サンライズ』ネタバレ感想&考察解説:コロナ禍で東京からの移住民に田舎が大騒ぎ!

コロナでてんやわんやだった時期が、懐かしく思える今日このごろ。

コロナ禍の被災地、とある海辺の小さな町を舞台に人との関わりを描いた『サンセット・サンライズ』をご紹介します。

人付き合いはこうあるべき!と凝り固まった考えをほぐしてくれる、優しい映画です!

そして、猛烈にお魚が食べたくなりますので、お魚が食べられる近くのお店を探しておくといいですよ〜。

本記事は感想考察にネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎

 

映画『サンセット・サンライズ』の評価

総合評価  3.8 / 5

評価コメント:結局何が言いたいのかわからないけど…、田舎暮らし最高か!

コロナ禍で三陸の田舎町に移住してきた東京の人が、住民に嫌煙されてトラブルに巻き込まれていく…な話かと思ったら、いいえ。人生激変するほど、この町が大好きになってしまった青年と地元住民との交流ドラマです。安心してほっこりしてください。

「コロナ」「震災」「空き家問題」と軸になるキーワードは重いのですが、クドカンらしい笑いを惜しげなく盛り込み、ひょうひょうと絶妙に軽やかなタッチで被災地の田舎が抱える問題が描かれます。

が、個人的には、芋煮会で住民たちが思いのたけをふりしぼった主張が、結局何が言いたいのかイマイチわからなくて、なんだか腑に落ちない感覚が残りました。

とれたて海の幸・山の幸が並ぶ贅沢すぎる家ごはん、気さくなじじばば、口は悪いけど行動は優しい地元の男たち。そして、手を加えなくてもそれだけで絶景な自然。田舎の魅力がそのまま等身大で描かれていて、田舎暮らしも素敵だなと思えます!

  • 三陸生まれ育ちの人
  • 最近、井上真央見てないな〜って人
  • 菅田将暉が演じるゆる〜い男が好きな人
  • 魚で酒を飲むのが大好きな人
  • 釣りが趣味の人

映画『サンセット・サンライズ』が視聴できる配信サービス

  • Netflix
  • U-NEXT

 

映画『サンセット・サンライズ』ネタバレなしあらすじ

新型コロナウイルスが国内でも首都圏を中心に流行り始めた2020年3月。東京の大企業に勤める西尾晋作(菅田将暉)は、リモートワークになったのをきっかけに、三陸の宇田濱に家を借りて「おためし移住」を開始した。4LDK家具完備で家賃6万円という神物件の大家・関野百香(井上真央)ら、地元の住民は西尾を”東京の人”と忌避していたが、次第に打ち解けていく。

宇田濱で憧れの田舎暮らしを満喫する晋作だったが、百香が悲しい過去を抱えていることを知る。そして、あることがきっかけで宇田濱の空き家再生プロジェクトを任されることになり、百香と協力して、田舎に潜む問題に立ち向かう。

映画『サンセット・サンライズ』ネタバレあり感想

マイルドなクドカン節が心地いい

「アニエスべーの新作?」。序盤からクドカンのユーモアがぽんぽこ飛び出して、取り扱う内容はわりとシリアスなのに、ふふっと笑えます。重くなりすぎなくて、気軽に見てほっこりするのにちょうどいい作品です。

「不適切にもほどがある!」や「池袋ウエストゲートパーク」とかに比べると、コメディの風味がマイルドに感じるのはなぜだろう…と考えて、わかりました。すっとぼけエロジジイがいないからだ!

いつも西田敏行や阿部サダヲが担当する、愛すべき親父。本作だと中村雅俊の章男さんがそのポジションにあたります。でも、百香と二人暮らししている手前、ところ構わず下ネタを言わせるわけにもいかず、ほかの男性キャラクターもエロ皆無でした。

クドカンの開き直ったエロは大好きだけど、もし百香のまわりの男たちが性欲をちらつかせたら、作品はコメディ色強めになってしまうし、田舎の問題がぼやけてしまったでしょう。「エロ控えめ」は、実際に同じ問題を抱える田舎の人たちへの、クドカンなりの誠意なんだと思います。

エロ抜きでもクドカンのコメディは、なんて軽くて的確なんだろう!田舎のあるあるを、しかも「そこいく?」みたいな鋭いポイントを突いてきます。

茂子さんがパチンコ屋さんで、残酷な天使のテーゼが流れるフィーバー中に昇天してしまったのも、悲しいシーンなんだけど笑えてしまったし、とれたてのヒラメをカルパッチョにしてきた晋作に、章男さんが間髪入れずに「バガでねえの!」と絶叫するのも好き。

「美味しい」が言える人に悪い人はいない!

田舎の人は東京者を「偉そう」とか「気取ってる」と嫌厭しがちですが、晋作はスーッと宇田濱に溶け込んでしまいました。気づけば茂子さんをパチンコ屋まで送り迎えし、一番近くで見ていたと遺族に断言できるまでに!

三宅健扮するタケ、居酒屋マスターのケンさんや、ほかの住民も口が悪くて伝わりにくいけど根はいい人っていうのももちろんあると思います。

でも、やっぱり一番の理由は晋作の人柄でしょう。釣り好きの人に悪い人はいないって言ってたし。ね、お父さん?

なにに対してもリアクションが大きい晋作。最初は敵意剥き出しだった「モモちゃんの幸せを祈る会」メンバーも、晋作が出されたものすべて「うま!」と言って食べると、「んだべ?!」と嬉しそうに反応。口では突っぱねる言葉を吐きながら、次から次へと美味しい食べ方を教えてくれます。

作り手に面と向かって「美味しい」と言える人に悪い人はいない!出したものを「美味しい」と言われて嫌な気分になる人もいない!

地元の人と仲良くなるコツは、出された料理を「うめええええ!」と言って食べることかもしれません。

田舎の人は頭が固いわけではない

田舎の人は頭が固いから、と本作の中で何度も繰り返されました。だけど、空き家再生プロジェクトに名乗りをあげる住民が多かったり、章男さんが普通じゃない家族の在り方を受け入れたように、差し出されれば受け入れることはできる。

頭が固いんじゃなく、知らないだけ、思い付かないだけ。知りさえすれば、あとは前例があれば(これ大事)、田舎の人も都会の人もそこまで変わらないと思うのです。

36歳の百香の周りに同年代の独身の男がいれば、すぐ結婚と結びつけてくっつけたがるのは、「よかれと思って」の親切心からなるお節介ハラスメントでした。やめてよ〜と茶化せればよかったんだろうけど、そうできない百香の真面目さもストレスの一因に。でも、周囲の人が百香を心配する気持ちは、ひっきりなしに届く差し入れからも、ちゃんと伝わっていたでしょう。

タケ(三宅健)が晋作に思いっきり突っかかるのは、都会人拒絶というよりは、舐められないようにとの対抗心。その心理は可愛らしいとも思いますが、コミュ障でHSPの私にはあの態度取られたら、もう本当にその町ごと嫌いになりそう…。

そして、中村雅俊の東北訛りが、東北出身の私から見ても上手だな〜と思ったら、宮城県出身なんですね!

芋煮会は何が言いたかったんだろう

芋煮会での、晋作と居酒屋マスター・ケンさんの心からの叫びが、私にはしっかり理解できなくて。2回見直しても、「つまりどういうこと?」と、腑に落ちないでいます。

晋作の「なんでこんなに切ないんですかぁ!」は、生まれが違うだけでなぜ宇田濱の人は、表面上は親しげに見せかけて心の中ではよそ者に壁を作るのか?寂しいじゃないか!ということであってますか…。

ケンさんの長セリフは、僕らもなんだかんだ地元好きだし東京の人はいつでも遊びにきてね、おもてなしするよ!って解釈でいいですか?あの長尺で本当にこんなことを言っていたんですか?

ただ、震災を「どうでもいい!」と言い切る潔さは、本当によかったです。被災地だからって、罹災者だからってそんな哀れみで好きって言ってるんじゃないよ!と言いたかったんだろうけど、「どうでもいい!」の一言に、晋作の必死さが現れていたと思います。

映画『サンセット・サンライズ』考察・解説

【考察】百香が晋作との結婚を選ばなかった理由

晋作は宇田濱を去る前、百香に成り行きとはいえプロポーズしますが、百香は晋作との再婚を選びませんでした。

「私は無意識だったことなんてないから」の言葉から、百香も晋作に惹かれていたことが窺えます。

でも、いつまでも亡き家族を思い続けることが残されたものの義務とも思っている。そのためにも、自分が再婚して新しい人生を歩むわけにはいかないという気持ちが、どうしても手放せない。

しかし、再生した空き家が前の住人の思い出ごと大切にされていくのを見て、いくら人の手に渡ろうと思い出は消えないとわかったのでしょう。

過去を引きずったままでもいい(震災なんてどうでもいい、結婚が2回目でも僕は気にしない)と言う晋作の真意を、空き家再生を通して理解した百香。

百香に幸せを選んでほしい章男、亡き家族を大事にしたい百香、百香とともに宇田濱で過ごしたい晋作。それぞれの希望を「養子」という形で実現するのは、田舎都会関係なく、斬新で柔軟な選択です。「田舎の人は頭が固い」で終わらず、リベラルなラストに落ち着きました。

タイトルの『サンセット・サンライズ』は太陽が昇り沈むようにまた百香のもとへ現れた晋作は、百香の人生に太陽のように光をもたらしてくれる存在、ということも示していると思います。

【解説】田舎の空き家はどうして問題なのか

百香が取り組むことになった空き家問題ですが、田舎の空き家がなぜ問題なのかざっくり解説します。

空き家の問題点
  • 建物の老朽化 → 倒壊のリスクや害虫・害獣の発生に繋がる
  • 景観を損なう → 地価や街のイメージに悪影響
  • 相続放棄などで所有者不明のまま空き家になっても、行政が勝手に壊したりできない

人口減少や高齢化が進むことが避けられない将来、空き家はさらに増えていくでしょう。

でも、空き家を再生して貸し出すことによって、貸す側・借りる側にメリットがあります!

空き家を貸す側のメリット

  • 家賃収入で収益化できる
  • 老朽化を防止できる
  • 地域の活性化に繋がる(地域コミュニティ活性や人口&労働力増)
  • 治安悪化と景観悪化を防止できる

空き家を貸りる側のメリット

  • 首都圏より広い家を低コストで借りられる(家賃が安い!)
  • 自然に囲まれた暮らしができる
  • 地域の人との繋がりが生まれる

→ 手頃な価格で、憧れの田舎暮らしが実現できる!

双方にメリットがある空き家再生利用。ただ地方の家に引っ越して終わりじゃなく、地域の人との交流を通して、移住者が心地よく暮らしていけるコミュニティを築くことも重要です。

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tom
家賃6万円で家具付きの大きな家が借りられるなら、海辺の町で二拠点生活もありかも…と胸が高鳴りました!

映画『サンセット・サンライズ』主要登場人物・キャスト

西尾晋作(菅田将暉)
– 大企業・株式会社シンバルに勤める青年。釣りが好きが高じ、テレワーク移行を機に宇田濱でおためし移住を開始。

関野百香(井上真央)
– 晋作が借りた神物件の大家。町役場に勤めながら章男と二人で暮らしている。

関野章男(中村雅俊)
– 娘の百香と暮らす、漁師。気さくで明るく、晋作にも分け隔てなく接する。

高森武(三宅健)
– あだ名はタケ。口は悪く熱くなりやすいが、情に厚い。モモちゃんの幸せを祈る会メンバー。

倉部健介(竹原ピストル)
– 居酒屋店主でモモちゃんの幸せを祈る会メンバー。口数少なく無愛想だがホスピタリティに溢れた熱い男。

山城進一郎(山本浩司)
– モモちゃんの幸せを祈る会メンバー。町長選に立候補し次期町長となる。

平畑耕作(好井まさお)
– 町役場に勤める百香の同僚、モモちゃんの幸せを祈る会メンバーでもある。

持田仁美(池脇千鶴)
– 町役場に勤める百香の同僚。百香と祈る会メンバーを気にかけている。絡み酒の癖がある。

村山茂子(白川和子)
– 晋作の家の近隣住人で晋作と仲良くなる。パチンコが趣味で晋作にパチンコ屋まで送迎を頼んでいる。

大津誠一郎(小日向文世)
– 株式会社シンバル社長。ビジネスチャンスに鋭い嗅覚を持つが、仕事の話になると一方的で社員からも一歩引かれる。

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tom
いつもスルメを咥えている重蔵さんを演じていたのはビートきよしです!

映画『サンセット・サンライズ』作品情報

作品情報

⚫︎ 公開年:2025年
⚫︎ 尺:139分
⚫︎ 監督:岸善幸
⚫︎ 脚本:宮藤官九郎
⚫︎ 撮影:今村圭佑
⚫︎ 音楽:網守将平
⚫︎ 英題:Sunset Sunrise
⚫︎ 配給:ワーナー・ブラザーズ映画
岸善幸監督の主な作品
  • 『あゝ、荒野』(2017年)
  • 『前科者』(2022年)
  • 『正欲』(2023年)
脚本:宮藤官九郎の主な作品
  • ドラマ『木更津キャッツアイ』(2002年)
  • ドラマ『あまちゃん』(2013年)
  • 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)
  • ドラマ『不適切にもほどがある!』(2024年)

予告動画

 

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