ネトフリで気になる作品を漁っていたら、ずらっと並ぶ作品ビジュアルの中に見たことがある顔を発見。『オレンジ・イズ・ニューブラック』で一番強烈だったスーザンだ!
ウゾ・アドゥーバの変人じゃない演技が見てみたくて、『ザ・レジデンス』を視聴した。でもそこは探偵ものなので、薄々そんな気はしていたけれど、今回もウゾはちょっと変な役柄。
テイストはコミカルなのに一筋縄ではいかないミステリー。何よりも、ホワイトハウスの内部が興味深くて、最後まで新鮮さを失わない魅力作だった。
本記事は感想にネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎
Netflix『ザ・レジデンス』の評価
総合評価 3.3 / 5 点
評価コメント:キャラもプロットもいいけど捜査がマンネリで長い!!!
ホワイトハウスでチーフアッシャー(支配人統括)が殺害され、157人が容疑者となる前代未聞の密室事件が起きた。
変わり者で世界一の名探偵コーデリアが多すぎる容疑者から証言を集めるが、嘘や主観が交錯し、真実は人の数だけ存在する。いろんな人の思惑が絡むこの高難度な事件は、ミステリー好きを必ずや楽しませてくれる。
一方、無表情で感情を見せないコーデリアには探偵としての魅力がいまひとつ足りない。何人にもわたる聞き取り捜査の繰り返しも冗長に感じられ、飽きてしまう演出だった。
しかし、全体の軽やかなコミカルさと、FBI捜査官パークや議員ビッグスら個性的な脇役が、プロットの面白さを引き立てる。
さらに、ノンフィクション本をベースにしたホワイトハウス内部の詳細描写や、豪華ゲスト演出、各話タイトルの名作ミステリーへのオマージュなど、この作品でしか味わえない魅力は多い。
Netflix『ザ・レジデンス』ネタバレなしあらすじ
アメリカの象徴ともいえるホワイトハウス――その荘厳な大邸宅で、オーストラリア首相を招いての国際的な晩餐会が催されていた夜、思いもよらぬ事件が起きる。なんと、チーフ・アッシャーがその晩餐会中に遺体となって発見されたのだ。
容疑者は、大統領一家、使用人、さらには招聘された要人やゲストなど、その場にいたすべての関係者157人。
事件の捜査のために「世界一の探偵」と呼ばれるコーデリア・カップが召集された。彼女は観察力と分析力に長けるが、何よりもバードウォッチングが好きで、サバ缶を主食にする、マイペースな変わり者。
コーデリアは周囲を振り回しながら、ホワイトハウスの“裏側”で働く使用人たちによる証言や、晩餐会での細かな出来事、過去の人間関係に残る微妙な軋みをかき集め、一晩かけてじっくり検めていく。
しかし、事件はあまりにもあまりにも不可解、関係者も多いうえにそれぞれの欲や嘘が絡み合い、捜査は難航。後日、事件についての公聴会が行われ、関係者たちが順に証言台に立つも、相変わらず彼らの証言は微妙にすれ違い錯綜する。
次第に事件の輪郭が浮き彫りになり、ついにコーデリアは驚きの事実に辿り着く。
Netflix『ザ・レジデンス』ネタバレあり感想
人の数だけ真実がある
ホワイトハウスという、限られた人しか立ち入れない空間で、チーフアッシャー(使用人のトップ)のA・Bが殺害された。容疑者157人の密室殺人。
特にモーガン政権の支持率低迷中の今、ホワイトハウスでの殺人事件などあってはならないことだ。この事件の背後には、大統領の失墜を狙う何者が隠れているのだろうか。
そんな中、この人なら!と呼び出された名探偵・コーデリアは、少しでもA・Bと関与した人から話聞いていくのだが、何しろ容疑者がとにかく多い。ときには自己保身のため嘘まじりの証言をする者もいて、話が噛み合わない。罪の擦りつけ合戦が繰り広げられる。
証言する人が嘘なく見たままの真実を話していても、当時の心理状態や人間関係によって、まるで違った見え方をするのが本作のおもしろいところ。
ホワイトハウス内ではいい人と評判の人が、次の証人にとっては性悪で嫌なやつだったりする。本人は真っ当な理由があって良かれと思ってやったことでも、別の人にはあいつが犯人に違いない!と思わせる怪しい行動として見えている。
人の数だけ、この事件の夜についての主観的な真実があり、誰もが自分の証言が正しいと信じて疑わない。だが、真実=事実とは限らないのがミステリーのお約束。
コーデリアは、この多面的カオスの中に潜む核心を探り当て、少しずつ、確実に事実を浮き彫りにしていく。
容疑者や物的証拠が多く、視聴者に与えられるヒントも難しくて、謎解きとしての難易度は高い。私は最後まで犯人がわからなかった。ミステリー好きは挑みがいがあって、楽しめるだろう。
ただ、捜査の過程が【聴取→見に行って確認】のワンパターンで、これが感情の起伏のないコーデリアによって延々と繰り返されるので、飽きる。必ず飽きる。
コーデリアはずっと会話を見ていたいほど、話術に長けていたり、魅力溢れる探偵ではないので、捜査にたっぷり時間をかける8話は長く感じた。2時間の映画でもよかったなあ。
探偵コーデリアに足りない魅力とは
探偵作品は、探偵のキャラクター性がもっとも大事だと改めて感じた。
「世界一の名探偵」で無類の鳥好き、無愛想で寡黙、変わり者のコーデリアも、決して悪くない。頭はキレるがコミュニケーション能力に難ありという探偵らしさはしっかり押さえている。
決して悪くないのだが、なんだかいまひとつ惹きつけられない。
チャーミングさが足りないのが一因だと思う。ホームズ、ポアロ、ブノワ・ブランらにある、無茶をしても憎みきれない愛嬌、茶目っ気がコーデリアにはないのだ。
コーデリアは、鳥を見つけたときは嬉しそうな表情をするものの、人に対しては基本的に無表情で冷淡だ。このキャラクターのどこに親しみを抱き、愛せばいいのかわからないまま終わってしまった。圧倒的なカリスマ性があればまだよかったが、それもない。そこらへんにいる、ちょっと変わり者のおばさんという程度の個性に留まってしまっている。
そのかわり、とっつきにくいコーデリアとぎこちない距離感で困りまくるFBI捜査官エドウィン・パークが際立っていた。困惑と怒りと呆れで眉毛を常にハの字に歪ませながらついて行く、ワトソン的ポジション!
ぶっ飛んだキャラではないが、きっとFBI内でもいい同僚で、いいパパで、いい夫なんだろうなと想像を掻き立てる素朴な魅力がある。
公聴会でギャンギャン声を荒げながら、実はそこまでの話を要約して視聴者にわかりやすく説明してくれる役割のビッグス議員も、ヒステリー女かと思えば正義感に熱く、事件の解明をノリノリで楽しんでいたりと、いろんな側面があって実に魅力的だった。
コーデリアを演じるウゾ・アドゥーバは「オレンジイズニューブラック」では”クレイジーアイズ”ことスーザン役で、強烈に印象付いている。コーデリアの、人の不安をじわじわと煽る絶妙な無表情はもはや達人芸。
出演なしでも存在感大なヒュー・ジャックマン
各界の著名人が集まった晩餐会でも、特に注目を浴びて(ネタにされて?)いたのが、俳優ヒュー・ジャックマンと歌手カイリー・ミノーグ。
両名ともオーストラリア出身なので、オーストラリア来賓に合わせての招待という設定だったのでしょう。
カイリー・ミノーグは本人出演で、歌唱だけじゃなく、一番豪華なリンカーンルームに泊まらせろ!と厚かましくゴネる姿まで見せてくれるというサービスっぷり。
一方、ホワイトハウスのスタッフも浮かれてしまうほどの大スター、ヒュー・ジャックマンは出演なし。セリフもあるし、後ろ姿や足は映るものの、ほかの誰かがヒューを演じていた。きっとオファーしたものの出演は断られ、名前の利用許諾だけもらえたのかな。
ヒュー本人の姿は映らなくても、名前が出てくるだけで「おお!」と思わせるこの存在感!
ホワイトハウスの晩餐会には、ハリウッドスターや歌手が招待されることは珍しくないだろうけれど、ヒュー・ジャックマンクラスになると別格らしく、使用人たちも浮かれていたのが可笑しかった。
Netflix『ザ・レジデンス』見どころ解説
見どころ①:実録ベースの詳細なホワイトハウスの内部事情
本作は、ホワイトハウス元使用人たちの取材を元にしたケイト・アンダーセン・ブラウワー著『使用人たちが見たホワイトハウス – 世界一有名な「家」の知られざる裏側』から着想を得て作られただけあって、ホワイトハウス使用人の仕事が詳細に描かれている。
ホワイトハウスでは日々どんなことが行われているか、お仕事コメディとしてもおもしろい。
新大統領入居の日が、大統領の任期4年中で一番忙しいだとか、シャワーの水圧にうるさい大統領だとか、国のトップたる大統領とて、同じように衣食住を要する人間だということがおもしろ可笑しく明かされる。
建物の再現も忠実で、本作で初めてホワイトハウスの内部を見る、という人もいるだろう。
執務室など一部だけなら他作品でも見る機会はあるが、本作ではホワイトハウス レジデンスのあらゆるゲストルームから、使用人たちの作業場や休憩室まで、たーっぷり見られる。
何度か映るホワイトハウス全体の断面図は、世界一豪華なシルバニアファミリーのおうちのよう。部屋ごとに違う壁紙の色や調度品で飾られた部屋が並び、中では忙しなく人が動き回り、見ているだけでワクワクする。
トランプ大統領は2025年8月に、ホワイトハウスの大規模改修を発表した。執務室を金ピカに改装し、ローズガーデンには2億ドルかけて大宴会場を建設する由。秀吉といい、トランプといい、金ピカな空間で人が正気を保てると思えるところがすごい。
アメリカ大統領がどんな家に住んでいるか、一見の価値あり。
見どころ②:名作ミステリーオマージュの各話のタイトル
各話のタイトルには、小説や映画の名作ミステリ作品のタイトルを冠し、過去の偉大な名作へのオマージュになっている。
さらに、タイトルは各話の内容にも関係していて、「タイトルが示すのはこのことか!」と発見する楽しみもある。
各話のタイトルと、引用作品は以下の通り。
タイトル | 監督・作者 | ジャンル/年代 | |
1話 | アッシャー家の崩壊 | エドガー・アラン・ポー | 小説/1839年 |
2話 | ダイヤルMを廻せ! | アルフレッド・ヒッチコック | 映画/1954年 |
3話 | ナイブズ・アウト | ライアン・ジョンソン | 映画/2019年 |
4話 | シーラ号の謎 | ハーバート・ロス | 映画/1973年 |
5話 | ハリーの災難 | アルフレッド・ヒッチコック | 映画/1955年 |
6話 | 第三の男 | キャロル・リード | 映画/1949年 |
7話 | 技師の親指 | アーサー・コナン・ドイル | 小説/1892年 |
8話 | 黄色い部屋の秘密 | ガストン・ルルー | 小説/1907年 |
Netflix『ザ・レジデンス』主な登場人物・キャスト
コーデリア・カップ(ウゾ・アドゥーバ)
– 「世界一の探偵」として世界中で活躍する凄腕探偵、MPD(ワシントンD.C.首都警察)の顧問探偵を務める。趣味はバードウォッチング。
ホワイトハウス使用人
A・B・ウィンター(ジャンカルロ・エスポジート)
– ホワイトハウスの敏腕チーフ・アッシャー。感情を表に出さず、真面目で読書家である。
ジャスミン・ヘイニー(スーザン・ケレチ・ワトソン)
– アシスタントアッシャー。A・B退職後はチーフアッシャーに就任予定。
マーヴェラ(メアリー・ワイズマン)
– ホワイトハウス総料理長。気性は荒いが料理のセンスは抜群。
ディディエ・ゴダード(ブロンソン・ピンチョット)
– ホワイトハウスのパティシエ。几帳面な性格で、マーヴェラと気が合わずいがみ合っている。
シーラ・キャノン(エドウィン・フィンドリー・ディッカーソン)
– ホワイトハウスの執事。職務中に隠れてこっそり酒を飲んでいるが、同僚にはバレている。
リリー・シューマカー(モーリー・グリックス)
– ホワイトハウスで催される社交イベントを取り仕切るソーシャル・セクレタリー。
エルジー・シェイル(フリエット・レストレポ)
– ホワイトハウスのハウスキーパー。シングルマザーで娘が一人いる。
ブルース・ゲラー(メル・ロドリゲス)
– ホワイトハウスの配管技師。心優しい中年男性で、息子がいる。
エミリー・マキル(レベッカ・フィールド)
– ホワイトハウスの庭師。レッドウッド国立公園で働くのが夢。
大統領関係者
ペリー・モーガン(ポール・フィッツジェラルド)
– アメリカ大統領。シャワーの水圧にこだわりが強く、配管技師のブルースを困らせた。
トリップ・モーガン(ジェイソン・リー)
– アメリカ大統領の弟。素行が悪く、大統領の名前に傷がつくことを危惧した兄ペリーによって、監視目的でホワイトハウスに住まわされている。
エリオット・モーガン(バーレット・フォア)
– 大統領のパートナー(夫)で、ファーストジェントルマン。
ハリー・ホリンジャー(ケン・マリーノ)
– ホワイトハウスに住む、大統領主席補佐官。
ナン・コックス(ジェーン・カーティン)
– エリオットの母で高齢のためホワイトハウスに住んでいる。酒を止められているが、毎日1本のウォッカが欠かせない。
捜査関係者
エドウィン・パーク(ランドール・パーク)
– FBI捜査官。事件担当としてコーデリアとともに捜査を行う。
ラリー・ドークス(イザイア・ウィットロック・Jr)
– MPD(ワシントンD.C.首都警察)の署長。コーデリアに「世界一優秀な探偵」と信頼を寄せる。
晩餐会ゲスト
ステファン・ルース(ジュリアン・マクマホン)
– オーストラリア首相。晩餐会への参加は乗り気ではなかった。
デイヴィッド・ライランス(ブレット・タッカー)
– オーストラリア外相(外務大臣)。
カイリー・ミノーグ(カイリー・ミノーグ本人出演)
– 晩餐会のゲスト。参加できなくなった歌手に代わり、急遽パフォーマンスを披露。
ヒュー・ジャックマン(ジャスティン・エリス・ジョンソン)
– 晩餐会の注目ゲスト。オーストラリア出身。
パトリック・ドゥンベ(ティモシー・ホーナー)
– 招待されていないのに晩餐会に参加していた謎の男。
公聴会
アーロン・フィルキンス(アル・フランケン)
– ワシントン州選出上院議員。公聴会の議長として聴取を進行する。
マージェリー・ベイ・ビックス(エリザ・クーペ)
– 公聴会に参加するコロラド州選出上院議員。
Netflix『ザ・レジデンス』作品情報
作品情報
⚫︎ 製作国:アメリカ
⚫︎ 話数:全8話(各話 約1時間)
⚫︎ 製作総指揮:ションダ・ライムズ、ベッツィ・ビアーズ
⚫︎ 監督:リザ・ジョンソン、ジャアファル・マムード
⚫︎ 脚本:ポール・ウィリアム・デイヴィス
⚫︎ 音楽:マーク・マザーズボー
⚫︎ 原題:The Residence
- グレイズ・アナトミー 恋の解剖学(2005年〜)
- プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち(2007〜2013年)
- スキャンダル 託された秘密(2012〜2018年)
予告動画
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