映画『バッファロー’66』ネタバレ感想&考察解説|天使すぎる少女と自意識過剰男の妄愛系こじらせラブストーリー

1998年の映画『バッファロー’66』は、こじらせた男の自意識と少女の風変わりなラブストーリーだ。二人の関係はどう見ても健全でも現実的でもない。それなのに、この物語はなぜか目が離せない。

「こじらせ童貞の妄想ストーリー」とも言える、痛々しいほど身勝手な男の願望を、ヴィンセント・ギャロはシニカルなユーモアと洗練された映像で包み込み、唯一無二の“おしゃれ映画”へと昇華させてみせた。

この記事では、ネタバレありで本作の感想や見どころ、そして賛否を呼び続ける理由を掘り下げていく。本作をおもしろく見た人も、違和感を抱えたまま見終えた人も、一緒に振り返っていきましょう!

これから見ようとしている方は参考にどうぞ!

本記事は感想にネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎

映画『バッファロー’66』の評価

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総合評価  4.1 / 5

評価コメント:このヒロインの可愛さ、洋画界の歴史に残る

映画『バッファロー’66』は、ひねくれ者のダメ男が“奇跡みたいな出会い”を経験する、ちょっと変わったラブストーリーだ。

ヒロイン・レイラは驚くほど優しく、賢く、ビリーの嘘も弱さも丸ごと受け止めてくれる。まるで夢のような存在。なによりクリスティーナ・リッチのあどけなさと妖艶さを兼ね備えた可愛さが本作の最大の魅力となっている。

こじらせ主人公の妄想とも受け取れる現実離れした展開を、完璧に“おしゃれ映画”として成立させている。

個性派ぞろいのブラウン家や、どこか笑えるオチ、こだわりの演出も見どころ。小難しく重たそうに見えて、実は「たった一人との出会いが人生を変える」というロマンチックなテーマを描く一本だ。サブカル映画が好きな人なら、きっとクセになるはず。

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映画『バッファロー’66』ネタバレなしあらすじ

刑務所を出所したビリー・ブラウンは、実家のあるニューヨーク州バッファローへと戻ってきた。刑務所に入っていたことを両親には伝えておらず、母親への電話で「妻を連れて行く」と嘘をついてしまったビリーは、その場に居合わせた少女レイラを攫い、ほとんど脅しながら強制的に妻に仕立て上げた。

ビリーは両親、特に地元のアメフトチーム「バッファロー」熱狂的ファンである母親との間にわだかまりを抱き続けている。ビリーの緊張をよそに、レイラは夫を愛してやまない妻役を完璧に演じて見せ、両親は大喜び。ビリーそっちのけでレイラを可愛がった。

ビリーには出所後に遂行したかった目的がもう一つあった。刑務所に入るきっかけを作った男・スコットへの復讐だ。5年前、アメフト賭博でバッファロー優勝に大金を賭けたビリーは、当時バッファローの選手だったスコットの八百長の噂を知り、報復を心に決めていた。

アメフト選手を引退したスコットは今、街でストリップバーを経営している。スコットが店に顔を出す深夜2時まで、ビリーはレイラを連れてボーリング場やモーテルで時間を潰す。

レイラは横暴で神経質なビリーが時折見せる、繊細で弱々しい一面に次第に愛情を抱く一方で、ビリーがなにか危険なことをしようとしていることを察していた。潔癖なまでに他人を拒絶するビリーも、少しずつレイラに心を開いていく。

そして深夜、「行かないで」と止めるレイラを残してビリーはスコットの店に向かったーー。

映画『バッファロー’66』ネタバレあり感想

童貞ミーツガールな大人のおとぎ話

どう見ても素敵な恋愛ではない。なのになぜ、こんなにおもしろいんだろう!それは、語弊を恐れずに言うと、本作が徹底して「こじらせ男の願いを全部叶える妄想ファンタジー」だからだと思う。

ビリーは最初から最後まで自意識に凝り固まった神経質でめんどくさい男のままで、レイラがビリーを好きになる理由にエクスキューズがない。不満そうに口をへの字に曲げたキュートな顔で、文句も言わず命令に従ってくれるエロいマシュマロ美女。慈愛に満ちた彼女はビリーを愛し、ビリーの不安を察すると寄り添い抱きしめてくれる。

んなわけあるかい!な、男の空想てんこもりの物語を、ヴィンセント・ギャロはコメディに振らず完璧なおしゃれ映画に仕上げてみせた。ヴィンセント・ギャロの価値観や自意識が多大に反映されているらしい。彼の世界はこんなに寒そうで、変だけどどこか愛らしい人だらけなのだろう。ちなみにヴィンセントは日本製の白ブリーフが大好きらしい。

そして本作を語る上で、妖艶な見た目に反してどこまでも健気で優しい、男前ならぬ女前すぎるレイラの魅力も外せない。どう贔屓目にみてもダメ男すぎるビリーにそこまで尽くすのはなぜ?と、あまりの聖母っぷりに謎の涙が出そうになる。

レイラの過去はおろか年齢さえも描かれていない。相手の素性や、彼女が今何を思っているかなんてどうでもよくて、とにかく自分の思うままに尽くしてくれればいい、という童貞思想がそこにも現れていて、どこまでも完璧な大人のおとぎ話なのだ。

こじらせ主人公が求める天使像の日米比較

気難しく人付き合いが苦手な男性が少女と出会って恋に落ちるお話は、日本の得意分野と言ってもいい。日本のアニメやラノベ作品には、こじらせ主人公に尽くし、画面の向こう側の男性たちの憧れを叶えてくれる、数多のヒロインがいる。

本作のレイラもそんな天使ちゃんだが、海外作品のその手のヒロインたちと、日本のヒロインたちは少しタイプが違うように思う。

日本作品における天使ヒロインは、たいていの場合「主人公と並走する存在」として描かれる。日本の天使ヒロインは、主人公を導くというよりも、支え合うための相棒として配置されることが多い。

気難しく不器用な主人公に対し、少しおっとりしていたり、明るく元気だけどドジだったり、あるいは控えめで自己主張が弱かったりする。彼女たちは万能ではないが、その分「守ってあげたい」、「一緒に成長していきたい」という関係性が成立する。

それに対して、本作のレイラは明確に違う。彼女は決して無知でも鈍感でもない。状況判断が早く、機転が利き、ビリーの嘘や虚勢も即座に理解したうえで受け入れる、もはや聖母である!

精神的にも感情的にも、主導権を握っているのはむしろレイラの側だ。彼女は寄り添っているように見えて、実際にはビリーを一段上から見下ろし、正しい方向へと引っ張り上げる指導者のような役割を担っている。

でも…、巨乳天使への憧れは世界共通です!

猛烈母と尻に敷かれる父!意外と普通なブラウン家

ビリーの実家ブラウン家は、歪な家族として描かれたけれど、よくよく考えてみるとそこまでおかしな家族でもないように思える。

息子よりバッファロー優先な熱狂的サポのビリー母が強烈なのは確かだが、男の威厳を見せたいのに妻に意見できない夫は珍しくない。

父の寝室が、赤とネイビーのバッファローカラーでコーディネートされていたのには笑ってしまった!バッファローグッズだらけの家の中で、父の部屋だけが完璧なチームカラーなのだ。母があれこれと勝手に飾り、父は内心嫌だけど文句言えずに放任…な日常が想像できる。

それでも父は息子を褒められると喜ぶし、母も我が子にいろいろ食べさせようとするし、彼らなりの愛情表現はある。家族全員を「ハニー」と呼んで、幸せな家族らしく取り繕おうとする姿勢も見える。

強すぎる母、尻に敷かれながらも家庭に居場所を見出している父、そしてその狭間で拗ね続ける息子。視点を変えれば、ブラウン家は異常というよりキャラの立った、ネタに事欠かない愉快な家族とも言える。

ビリーの歪みは、この家族が特別に壊れていたからではなく、よくある家庭のちょっとした歪みを、彼自身が過剰に抱え込んでしまった結果なのかもしれない。そう思えてしまうところまで含めて、この家族は妙にリアルなのだ。

映画『バッファロー’66』考察・解説

【考察】なぜビリーは土壇場で復讐をやめたのか

収監中からあたためていた復讐を、土壇場で止めたビリー。ビリーの復讐心を溶かした要因はなんだったのかを深掘りしたい。

ビリーの意思を変えた要因は3点あると私は考えている。

  1. 女性から認められたい欲がレイラによって満たされる予感
  2. 憧れのスター選手スコットが変態中年で拍子抜けした
  3. 両親のことが頭によぎった

①女性から認められたい欲がレイラによって満たされる予感

ビリーは母親からの無関心やウェンディへの失恋で、女性から肯定されたい・認められたいという欲を人一倍強く抱いている。性欲という意味での憧れよりも、対等かそれ以上の存在として認識されたいという欲求。

その欲求を満たしてくれるレイラに出会った。そして、このまま彼女と一緒にいればもっと自尊心や優越感を満たすことができるかもしれないと、ビリーに希望が湧いたのだ。

スコットの店から出てすぐに、グーンに電話で「俺を超愛している彼女がいる」と嘘大盛りで自慢したビリーの、別人のように弾む声や表情から、ビリーの脳内は復讐よりもレイラのことでいっぱいになっていることがダダ漏れだ。その後のカフェでのやり取りも微笑ましい。

おしゃれサブカル映画として名前があがる本作だが、「たった一人との出会いが世界を変える」というテーマを据えた、ロマンチックな作品でもある。

②憧れのスター選手スコットが変態中年で拍子抜けした

ビリーが復讐を誓ったスコットは高校時代からスーパースターで、同じ学校に通うビリーにとっても憧れの存在だった。スコットはもうアメフト選手を引退しているが、刑務所で外の情報から隔絶されていたビリーの脳内では、スコットは依然としてスターだったはずだ。

しかし、初めて実際に見たスコットは、裸に蝶ネクタイで小太りの変態中年だった。

生きる目的にもなっていた憎い相手が、自分と対して変わらない(ように見える)しょうもない人間だった。その衝撃は、ビリーに復讐を放棄させるのに十分だったというわけだ。

ビリーが実家から友人グーンに電話をかけるシーンでは、数年前に比べるとすっかり太ったグーンのたるんだ腹部がしばらくアップで映る。本作では太ってお腹が出ることに、時間の流れが反映されている。

③両親のことが頭によぎった

ビリーがスコットを撃ち、自分の頭を撃って倒れるイメージが流れたあと、ビリーの墓の横に座る両親のカットが続くことから、スコットを前にしたビリーの頭には両親のことがよぎったことがわかる。

ここでも母親はバッファローの試合中継を聞いていて、父親は昼食に行こうと言い息子の死を悲しむ様子はない。

想像上の両親の様子に対して、ビリーがどんな感情を抱いているのかははっきりとは描かれていない。

だが、復讐の緊張から解かれたビリーには、「こんな両親だけどこれからも付き合ってやるか」というポジティブな気持ちがあるのではないかと私は想像している。

【解説】トイレを求めて彷徨うビリーから読み取れる暗喩

ビリーは作中で、2回もトイレを求めて彷徨っている。この「トイレを貸してもらえない」描写には、ビリーを受け入れてくれる人がいない、社会の冷たさが反映されている。

ビリーが無事にトイレに入れた(不発も含む)2箇所は、ダンススタジオとデニーズ。そのどちらにもレイラがいる。唯一、レイラだけがビリーを受け入れてくれる存在だと読み取れる。

また、実家ではビリーがトイレに行く描写はない。それは、両親もまたビリーを受け入れる存在ではないことを表しているのだろう。

【解説】家族団欒シーンのそれぞれの視点ショットの意味

ビリーの実家での団欒シーンは、4人それぞれの視点ショットが繋ぎ合わされながら進んでいく。4人が見ている景色、この状況に対して抱いている感情が、場面に表れていたので解説していく。

①レイラ視点のショット

無表情なビリーと両親。ビリーの背後の壁だけがダークトーンの壁紙。3人の間を間接照明のフロアライトが照らす。
→壁の色は、ビリーがこの状況に不安や緊張を抱えていることの表れ。フロアライトはこの家族が無理やり明るく繕っているイメージ。

②ビリー視点のショット

楽しそうに笑いながら話す両親とレイラ。レイラの背後の壁や棚にはバッファローチームの写真や記念品が飾られている。このショットだけ暖色の照明。
→レイラのおかげで、仲睦まじい家族らしく振る舞うことができている。本来子どもの写真やトロフィーが飾られているであろう棚や壁は、ビリーの代わりに、母が愛するバッファローの写真やグッズで埋め尽くされている。

③母ジャン視点のショット

母が座る席から正面に見えるのは、バッファローの壁掛け時計とキッチン。
→このとき母が考えているのは、バッファローのことと、夕飯やいま出す飲み物やお菓子のこと。

④父ジミー視点のショット

このショットのビリーは他のショットよりかなり青白く、母とレイラは笑いながら話している。背後の壁には母の近くにバッファローの写真が飾られているほか、なにもない。
→父視点の青白いビリーは、父がビリーを頼りなく貧弱そうに思っていることの表れ。バッファローの写真以外、余計な装飾やアイテムがないのはこの家での父の意見の弱さや、無関心が反映されている。

映画『バッファロー’66』主な登場人物・キャスト

ビリー・ブラウン(ヴィンセント・ギャロ)
アメフト賭博で負った借金を解決するため、罪を被って刑務所に入った。歪な家庭環境で育ち、性格はキレやすく神経質で友人も少ない。

レイラ(クリスティーナ・リッチ)
ダンスレッスン中にビリーに拉致され、妻のふりをして両親に会ってほしいと頼まれる。

ジミー(ベン・ギャザラ)
ビリーの父。若い頃はショークラブで歌手をしていた。

ジャン(アンジェリカ・ヒューストン)
ビリーの母。フットボールチーム「バッファロー」の熱狂的ファンで、ビリーの誕生日に試合を見逃したことに文句を言い続けている。

ウェンディ・バルサム(ロザンナ・アークエット)
ビリーが思いを寄せていた同級生。ビリーのことははっきりと覚えていない。

スコット・ウッズ(ボブ・ウォール)
ビリーがアメフト賭博に負けた試合でゴールを外した、元バッファロー所属のアメフト選手。現在はストリップバーを経営している。

グーン(ケヴィン・コリガン)
ビリーの友人。ビリー刑期中は、ビリーに代わって両親に手紙を出していた。

映画『バッファロー’66』作品情報

作品情報

⚫︎ 公開年:1998年/日本 1999年
⚫︎ 製作国:アメリカ
⚫︎ 尺:110分
⚫︎ 監督:ヴィンセント・ギャロ
⚫︎ 脚本:ヴィンセント・ギャロ、トビアス・アリソン・バグノール
⚫︎ 撮影:ランス・アコード
⚫︎ 音楽:ヴィンセント・ギャロ
⚫︎ 原題:Buffalo ’66

予告動画

 
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