映画『リボルバー・リリー』ネタバレ感想&考察解説|大正ロマンなファッションや世界観が美しい!けど内容はひどい?

戦う女・綾瀬はるかが今度は元敏腕スパイとして日本を救う『リボルバー・リリー』。
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シャネルやディオールを彷彿とさせるクラシックモダンなファッションを纏ってのガンアクションは、驚くほどエレガント。

本作を鑑賞しての率直な感想と、詳しく語られなかった点の疑問を深く掘り下げて考察していきます!

本記事は感想にネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎

映画『リボルバー・リリー』の評価

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総合評価  3.4 / 5

評価コメント:大正の世界観に浸るアートな映画としてなら最高!

アクションのリアリティには欠けるが、その無敵ぶりはむしろ爽快で、彼女の魅力を堪能するには十分。華やかなドレスを纏ったままのアクションは上品で新鮮、そして美しい。

作品の肝は何よりも大正ロマンの世界観!花街の毒々しいネオンや華麗なドレス、復興期の東京に漂う享楽と不安が織りなす危うさは、この作品独自の雰囲気を醸し出している。

長谷川博己演じる岩見が、百合に振り回されつつも献身的に支える姿は微笑ましく、ふたりの関係性は大きな魅力になっている。

さらに慎太少年の成長も物語を支え、強く優しい百合に導かれる姿は、母でも姉でも恋人でもない特別な絆を感じさせる。

個人的には評判ほどひどくは感じられなかったが、これは世界観の美しさを楽しめるかによるだろう。多少のご都合主義に目を瞑れば、艶やかで幻想的な時代の魅力と、キャラクター同士の関係性を楽しめる一本だ。

  • 福島県民はもれなく全員
  • 1920年代〜のクラシカルなヴィンテージファッションが好きな方
  • 大正ロマンな世界観に目がない方
  • 『八重の桜』か『奥様は、取扱注意』をご覧になった方

 

映画『リボルバー・リリー』が視聴できる配信サービス

  • Netflix
  • U-NEXT
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映画『リボルバー・リリー』ネタバレなしあらすじ

1924年(大正13年)、関東大震災から1年が経った東京は、目覚ましい復興で活気づく街に、有力者や組織の陰謀や企みが潜み、混沌の様子を呈していた。

東京・玉ノ井でカフェを営む小曾根百合は、「幣原機関」で特殊訓練を受け、わずか3年間で世界の要人57人を葬り「リボルバー・リリー」と呼ばれ恐れられる、元敏腕スパイだった。

百合は新聞で、かつての仲間・国松が実業家・細見欣也一家殺害事件を起こしたと知り、真相を確かめるべく秩父に向かう。国松の隠れ家は襲われた痕跡があり、陸軍の調査も入っていて、謎は深まるばかり。帰りの列車の中で百合は、追われる少年・慎太を見かけ、咄嗟に助ける。

慎太は細見欣也の息子で「小曾根百合のところに行け」と、とある資料を託されていた。それは細見が隠した莫大な財産に関する資料で、陸軍はこの金を狙っているらしい。

陸軍の容赦ない追走から慎太を守るために、百合は再び銃を手に戦うことを決めた。やがて二人は、時代の闇に潜む、国をも揺るがす大きな陰謀に巻き込まれていく。

 

映画『リボルバー・リリー』ネタバレあり感想

スパイ綾瀬はるかさん、また日本を救ってしまう

『奥様は、取扱注意』シリーズでもスパイを演じていた綾瀬はるか。正義のために戦う/闘う女が最も似合うのは、綾瀬はるかか米倉涼子だと思う。

そんな綾瀬はるかが、華麗な(軽やさや俊敏さはないけど、華と品がある)アクションで敵の陰謀をねじ伏せ、またしても日本を救った。

『八重の桜』、『精霊の守り人』でも、綾瀬はるかは凛々しく、かっこよく、強かった。

目新しさはないが、期待に確実に応えてくれる安心感が、戦う女・綾瀬はるかにはある。

綾瀬はるかが出る作品に視聴者が求めているのは、感動ストーリーやキレッキレなアクションではなく、どんなアプローチで綾瀬はるかの魅力を見せてくれるかではないか。私の母も、「あまりおもしろくないけど綾瀬はるかが出るから見てる」を口癖のように言う。

今回の百合はあまりにも無敵不死身すぎ、多勢の敵の攻撃がどういうわけか一向に百合に当たらない。一度倒れたモブ兵は患部を押さえて床でうごうごするばかりで立ち上がろうともしない。一周回って気持ちいいほどのご都合主義だったが、綾瀬はるかの持ち味を堪能できるという点では十分に視聴者のニーズに応えていた。

『八重の桜』、『はい、泳げません』ぶりに、長谷川博己とのバディがまた見れたので、本作に対する私の評価は上々。西島秀俊がよかったという声もあるようだけど、どちらも捨てがたい。何度でも見たい組み合わせが複数あるなんて、贅沢な幸せじゃないか。

百合の後ろをついて歩く岩見の背中や唇の端に、百合への信頼と尊敬と、百合が可愛くてたまらない恋する男の浮遊感が浮かぶ。

街の遊女やおねえさんたちからモテモテ、コミュ力も高く頭の回転も速い岩見が、百合には献身的に尽くし振り回されるのが、最後までとても微笑ましかった!

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陸軍大尉役のSixTONESジェシーの演技は棒でわざとらしかったけど、キャラクターの執念とねちっこさと上手くマッチ。すごくいい意味でうざい存在でした!

享楽的で色香漂う大正ロマンな世界観

ストーリー展開は都合良すぎて苦笑ものの本作だが、創造的大正ロマンな世界観は、他作品より断然魅力的に映った。

リアリティよりもむしろ想像色の強い、煌びやかな大正ロマン。

怪しげで楽しそうなどぎついネオンが照らす花街、復興真っ只中のモダンな街並みの影に、軍や戦争の気配がぼんやりと漂う。人々の心にある享楽への渇望と哀愁が余計に強く感じられ、作中の震災直後の東京は危ういバランスの上でギリギリの調和を保っているのだとわかる。

女性たちの華やかな衣裳は、戦争への不安や女性を卑下する男性たちに対する武装であり、闘志の表れだ。

綺麗なドレスがステージや社交会だけでなく、戦場にもふさわしいとは本作を見るまで考えもしなかった。ドレスの動きまで計算したアクションは、他作品なかなか見られないので、未視聴の方はぜひドレスに注目してアクションシーンを見てほしい。

色っぽく、美しく、楽しげで、怪しい。日本の歴史の中でも大正時代は、女子を惹きつける異彩な魅力に溢れている。

大人の女に手を引かれた少年は幸運だ

慎太少年の成長が目覚ましかった。

顔つき、振る舞い、話し方。出会った当初はガードマンと子どもの関係だったが、最終局面では百合の頼もしいバディとして、背中を預けられるまでに!

思春期の少年が助けられるなら、屈強で厳しい男より、強く優しい女性がいい。

夫も子もなく所帯じみた生活感も感じさせない百合は、14歳の少年にとって、憧れや恋愛の対象にもなり得る。

彼女に手を引かれながら苦境を乗り越えたことは、思春期の少年にとって大事な成功体験となり自信も得られたろう。しかしどれだけ成長しても、彼女の前では子どものまま甘えることが許される。

少年を導いてくれる大人の女性は、母でも姉でも恋人でも友達でもないが、そのどれでもある。憧れと安心の両方を持ち合わせた存在なのだ。そんな奇跡のような女性に窮地で出会えた慎太は幸運だ。
 

映画『リボルバー・リリー』考察・解説

【考察】謎の老婆=「生」、南始=「死」の対比|百合の幻想だったのか?

百合が秩父行きの列車で出会った白い老婆と、百合と慎太を追いかけてくる男・南始の謎についての考察をしていく。

まず、彼らは老婆=「生」と南始=「死」を象徴する、対になる存在として位置付けられていた。

どちらも実体のある人間なのか、百合が作り出した幻想だったのかは曖昧なままだったが、どちらも百合の頭の中の存在だったとの見方もできるようになっていた。

老婆

老婆が登場したのは2回。

  1. 秩父への列車内で百合が見かけた
  2. カフェを攻撃された際に負った銃創で苦しむ百合をまじないによって癒すのを慎太が目撃 → 慎太が目を覚ます【夢オチ】

→ 慎太は百合を治癒する老婆を目撃したかのように思わされるが、直後に夢オチだったことがわかる。老婆は幻想で間違いないだろう。

この不思議な老婆によって、作品に神秘的な要素が加わり奥行きが出るが、本作のストーリーの柱が「戦争」や「金」と現実寄りなため、唐突なスピリチュアル老婆の登場に違和感は拭えない。

実際に、昔の地方祈祷師が鳥の絵を用いたまじないを扱う例はあるようで、鳥が病気を持って飛び去ってくれると信じられていたようだ。

南始

続いて、南始が登場した3シーンを思い出してみよう。

  1. 秩父から玉ノ井に帰る途中の、廃(?)工場〜船着場まで
  2. 震災復興記念祭の縁日
  3. 海軍省に向かう途中の池

結論から言うと、南始も百合の頭の中で作られた幻想だと私は考えている。

①の船着場では慎太を人質にとり書類を奪い去ったので、南始に絡め取られていた慎太にも南始の姿は見えていただろう。この場面だけ、慎太は南始と言葉を交わす描写があったが、それ以降は慎太は南始を目撃することはない。

しかし、南始登場時、工場で慎太が南始に「誰だ?」と詰問されていたシーンで、慎太は目の前に立つ南始を見ずに横を向いており返事もしない。南始の姿が見えていないようにも受け取れる。

また、②の縁日と③の池での決戦では、百合と慎太は一緒にいたにもかかわらず、南始を認識しているのは百合だけである。

再び①のシーンを思い返してみると、船着場に立つ南始と人質にとられた慎太に水面の反射光が当たり、二人に幻想的なゆらめきが重なっている点が気にかかる。

まるで、「これは百合が見ている幻ですよ」と言わんばかりではないか。ただ、このシーンが幻想オチだとすると、書類が消えた説明がつかなくなる。南始の存在については明確な答えは出ないまま、鑑賞側に委ねられている。

南始は百合の「死」への願望が具現化した存在であり、百合の成長をはっきりと分け示す、作品に必要不可欠なキャラクターだったことは確かだ。

【考察】平岡の謎|誰の命令で動いていたのか、百合に耳打ちした条件は?

平岡に指示を出していた黒幕は誰か?

「信じられる男です」と卑しく笑う、作中で最も信られない男・平岡。

当初は陸軍側に付いて慎太を追っていた平岡だが、ラストは何者かの指示で陸軍少佐・小沢を始末した。

平岡に撃たれた小沢が「閣下」と読んでいた電話の相手こそが、平岡に小沢暗殺を命じた黒幕。「閣下」は地位や身分の高い相手に使う敬称なので、爵位を持つ華族や有力政治家、軍の上層部の人物が考えられる。

関東大震災後、政府は復興費用で財政圧迫に苦しみ、陸軍軍縮が検討されていた。

平岡の背後には、今回の陸軍の失態をやり玉にあげて、一気に軍縮を進めてしまおうという、政治家の陰謀がある気がしてならない。

平岡が百合に耳打ちした条件とは?

慎太を誘拐した平岡は、慎太を返す条件としてあることを百合に耳打ちをし、百合は「それで手を打つ」と迷うことなく快諾している。

このとき平岡が提示した条件について、登場時から平岡は百合を女として狙っている仄めかしがあったので、まず率直に「愛人になれ」とか身体の関係を迫ったと思った。

しかし、条件を聞かされた百合の落ち着きようや、百合に想いを寄せる岩見が条件について深く追及しなかったことから、平岡は「色恋ではなくもっと政治的で、百合には容易く、平岡には利があること」を要求したのだろう。

平岡に利があることとは、小沢を動かす影の大物が望んでいること。=陸軍が慎太保護に失敗して金を逃し、陸軍全体の信用と権威を失うこと

したがって、平岡が百合に突きつけた条件は「陸軍から逃げ切り、慎太を海軍に引き渡せ」の線が濃厚だ。

映画『リボルバー・リリー』主な登場人物・キャスト

小曾根百合(綾瀬はるか)
– 「リボルバー・リリー」と恐れられた元敏腕女スパイ。ある事件を機に引退、現在は東京玉ノ井でカフェを営んでいる。

岩見良明(長谷川博己)
– 元海軍だが戦争に疑問を抱き退役、現在は弁護士をしている。百合に思いを寄せている。

細見慎太(羽村仁成)
– ある理由から家族を失い、陸軍に追われているところを百合に助けられる。14歳の少年。

奈加(シシド・カフカ)
– 百合が台湾にいた時代から共に行動している、元馬賊(騎馬盗賊)。

琴子(古川琴音)
– 百合が営むカフェ「ランブル」で働く少女。客には年齢を19歳と偽っているが実際は17歳である。

平岡(佐藤二朗)
– 百合の店に通うヤクザの5代目。笑顔の裏で何を企んでいるかわからない、つかみどころのない男。

南始(清水尋也)
– 百合の命を狙ってくる謎の男。

細見欣也(豊川悦司)
– 慎太の父親で実業家。ある計画のために、陸軍の武器を売り捌いて巨額の利益を得ていた。この金を陸軍に狙われている。

筒井国松(石橋蓮司)
– かつて台湾で百合や奈加と諜報活動に関わっていた。陸軍により、細見一家殺害犯に仕立てあげられる。

滝田(野村萬斎)
– 百合が贔屓にしている洋装店のテーラー。

陸軍

津山ヨーゼフ清親(ジェシー(SixTONES))
– 陸軍大尉。陸軍の精鋭部隊を率いて、百合と慎太を執拗に追ってくる。

小沢(板尾創路)
– 陸軍少佐。消失期限が迫った細見欣也の財産を軍事資金にする、今回の計画の指揮を執る。

海軍

山本五十六(阿部サダヲ)
– 海軍大佐。岩見のはたらきもあり、海軍と対立する陸軍が細見の金を手にすることを避けるため、慎太の保護を申し出る。

升永達吉(橋爪功)
– 元海軍の老人で、百合とも面識がある。細見欣也についての情報を岩見に教えてくれた。

 

映画『リボルバー・リリー』作品情報

作品情報

⚫︎ 公開年:2023年
⚫︎ 尺:139分
⚫︎ 原作:長浦京『リボルバー・リリー』(講談社)
⚫︎ 脚本:小林達夫、行定勲
⚫︎ 撮影:今村圭佑
⚫︎ 音楽:半野喜弘
⚫︎ 衣装デザイン監修:黒澤和子
⚫︎ 英題:Revolver LILY.
⚫︎ 配給:東映
行定勲監督の主な作品
  • 『GO』(2001年)
  • 『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)
  • 『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年)
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衣装デザイン監修の黒澤和子さんは、黒澤明監督!!!の長女で、映画を中心に衣装デザイナーとして活躍されています。

予告動画

 
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