2022年の映画『#スージー・サーチ』は、SNS時代の承認欲求を題材にしたサスペンススリラーだ。
地味で冴えない女子大生スージーは、人気インフルエンサー失踪事件をきっかけに注目を集めていくが、その成功の裏にはある秘密が隠されている。
ポップで軽やかな映像とブラックユーモアに包まれた物語は、「犯人は誰?」というミステリーから、「この先どう転ぶのか?」というサスペンススリラーへと姿を変え、見る者を最後まで惹きつける。
この記事では、ネタバレありで本作の感想や見どころを掘り下げていく。鑑賞後の驚きや違和感を共有したい人も、どんな作品か気になっている人も、ぜひ読み進めてほしい。
本記事は感想にネタバレを含みます。まだ未視聴の方はご注意ください◎
映画『#スージー・サーチ』の評価

総合評価 3.3 / 5 点
映画『#スージー・サーチ』は、地味で冴えないが賢くプライドの高い女子大生スージーが、“自力”で人気者になろうとする物語だ。
その手段が犯罪である点に新しさがあり、彼女の行動はバズりたい一般人や迷惑系配信者の延長線上にある。だからこそ観客はスージーを応援できず、転落を期待してしまう。
本作は「才能を認められて有名になりたい」というエゴと承認欲求に焦点を当て、SNS社会への皮肉を強調する。
物語はミステリーからサスペンスへと転調し、ビデオコラージュ的な映像やポップな演出が不穏さを際立たせる。その自由で柔軟な映像表現は新しい映画体験をもたらしてくれる。
だが、当たり障りのないストーリーは結末も想像の範疇を超えず、内容よりビジュアルのインパクトのほうが残る視聴後感となった。
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映画『#スージー・サーチ』ネタバレなしあらすじ
地味で目立たない大学生のスージーには、ある才能がある。子どものころから優れた推理力に長け、どんな推理小説でもすぐに犯人を言い当てることができるのだ。その才能を活かして、ポッドキャストで難事件を取り上げる番組を配信しているが、フォロワー数は一向に増えない。
女で一つでスージーを愛情深く育て、唯一スージーの才能を認めてくれる理解者だった母が病気に倒れ、今やスージーは母の看護、大学、バイト、保安官事務所インターンを一人でこなしている。
そんな中、大学の同級生で人気インフルエンサーのジェシーが行方不明になる。スージーは「この事件を解決して有名になる!」と意気込んで独自調査に乗り出し、調査の経過をポッドキャストで配信していった。
そして、ついにスージーはジェシーを発見!スージーのポッドキャストは人気爆発し、地味な学生生活から一転、英雄としてもてはやされる。憧れのジェシーとの距離も近づき、スージーの念願は叶った…かのように思われた。
未だ犯人は捕まらず、世間はスージーに犯人究明を期待する。だが、犯人に繋がる手がかりはなかなか出ない。なぜなら、ジェシー誘拐の真犯人はスージーなのだ。人気者になった今、なんとしても秘密を隠したいスージーの行動はエスカレートしていく。
映画『#スージー・サーチ』ネタバレあり感想
冴えない女子が”自力”で人気者に
地味で冴えない女の子が、”誰かに見出されて”、本人も理解が追いつかないままにあれよあれよと人気者になっていく話はたくさんある。SNSでの承認欲求を題材にした作品も決して珍しくない。
だが本作は、外見は地味で冴えないが賢くプライドが高いスージーが、計画的かつ戦略的に、”自力”で人気者の地位を手にしていく。その作戦が「犯罪」というところに新しさがある。
フォロワーを獲得したいがために行き過ぎたスージーの行動は、バズりたい一般人の迷惑行為や、迷惑系ユーチューバーのエンタメの皮をかぶった嫌がらせを拡張したにすぎない。
だからこそ、人気者になれてニヤけが止まらないスージーを応援することができない。はやく真相が明るみに出てスージーが転落することを期待してしまう。
母親の期待に応えたいスージーの気持ちや、ヤングケアラーの苦悩が知れたら、見る側はスージーに同調できたかもしれないが、本作では徹底的に「エゴ」にフォーカスすることで、SNS社会への皮肉が強調されている。
事件前はあんなに眩しかったジェシーが、トラウマやレイの死で崩れるにつれて、スージーが幻滅していくのもリアルで残酷だ。
正義でも愛のためでもなく、ただ承認欲求だけを燃料に走り続けた先に残るのは、栄光ではなく空虚だと、本作は社会に警告を鳴らしているのだと思えた。
犯人に気づいた人は死んでしまう法則
物語の中盤で犯人に気づいてしまったキャラクターはもれなく全員死んでしまう法則に、そろそろ名前は付いただろうか。ジェシー発見後すぐの段階でスージーを疑っていたレイは、あまりにもあっけない退場だった。
誰も傷つけないで穏便に済ませる計画が少しずつ狂い、なまじ頭が回るだけに、スージーは嘘を重ねて秘密を守り続けることになってしまったわけだが、元来スージーは人に危害を加えたいサイコパスではない。ただ、自分の能力を認めてもらって母親や同級生をあっと言わせたいだけ。それは私たちも普通に思っている感情だと思う。
だが、レイからもロギンス安官からも疑われるスージーは、本当に素朴で無害な女の子だったのだろうか。
日常の対人シーンで、どこが何がはうまく説明できないけれど、「この人悪い人ではないけど、変な人だな」と感じたことが何度かある。その、直感に訴えかける危険信号のようなものが、スージーの冷めた目や言葉の端にも潜んでいたはずだ。
スージーの危うさをカバーするような、キッチュで軽快なビジュアルエフェクトや、ポップな劇伴や効果音によって、余計に不穏さが掻き立てられた。
そして何より、スージー役のカーシー・クレモンズの、目の温度や口元の動きでの感情表現コントロールが素晴らしい。ラストのラスト、自らの失態を悟ったスージーから仮面が剥がれ落ちるかのように、目からスッと輝きが消え、口元がだらりと弛緩していくカットはこの作品の「スージーという人間の正体」を集約していると言えるだろう。
映画『#スージー・サーチ』見どころ解説
見どころ①:承認欲求×サスペンス×ユーモアの「今っぽさ」
ブラックユーモアのバランス感覚が絶妙で、「SNSでの承認欲求」を風刺するどころか、容赦なく抉ってくる。フォロワー数が人間の優劣に結びついてしまう現実を茶化しながらも、そんな社会が孕む危険に目を向けさせる。
物語は「犯人は誰?」というミステリーから、「スージーはどうなるのか?」というサスペンスへと姿を変えていく。そのトリッキーなプロット転換も、本作の大きな魅力だ。
ド直球な感情表現や、わかりやすく単純化された物語に乗りきれない感覚を持つ若い世代にこそ、グサリと突き刺さる鋭さがある。
見どころ②:ビデオコラージュを駆使した自由な映像表現
いろんな映像や素材を切り貼りしたビデオコラージュ風の映像や、軽快な効果音、テンポのいいカット割りを用いたこれまでにない映像表現は、インスタリールのように気楽で自由だ。
ポップでキッチュな色彩は、画面だけ見ると明るく軽やかだが、その明るさが強調されるほど物語の中で起きていることとのズレが際立ち、不穏さが増していく。
SNS上で注意を引くためにサムネイルや動画に過剰な装飾エフェクトや効果音を取り入れるという特徴を取り入れた映像は、内容とマッチして、作品の個性を引き立てている。
見どころ③:スージー女優の「じめっと」陰気な怪演
スージーというキャラクターの不気味さは、派手な言動や過激な行動よりも、むしろ表情の端々に滲み出ている。
驚きや怒りを大きく表現することはほとんどなく、目だけが妙に冴え、口元だけがわずかに歪む。その「じめっとした」表情の積み重ねが、彼女の内面に巣食う違和感を観客に刷り込んでいく。
スージーを演じたカーシー・クレモンズは、感情を外に放出するのではなく、抑え込んだまま湿度として残す演技を徹底している。
それによって、スージーは常に「無害そうに見えるのに、どこか信用できない」存在に見えるのだ。
映画『#スージー・サーチ』主な登場人物・キャスト
スージー・ウォリス(カーシー・クレモンズ)
– 母の看護をしながらバイトをこなす大学生。人一倍優れた推理力で難事件を解くポッドキャストを配信しているが、伸び悩んでいる。
ジェシー・ウィルコックス(アレックス・ウルフ)
– スージーの同級生で、瞑想動画で人気を博す有名インフルエンサー。突然行方不明になり、連日ニュースで取り上げられている。
ロギンス保安官(ジム・ガフィガン)
– ジェシー捜索の担当保安官。スージーがインターンしている保安官事務所に勤務する。
ヘイデン保安官(デヴィッド・ウォルトン)
– ロギンスの部下で証拠品管理を担当している。筋トレが趣味。
ジリアン(レイチェル・セノット)
– スージーのバイト同僚。気が強く意見をはっきり言う性格で、スージーのことは地味で変人と評する。
エドガー・キャボット(ケン・マリーノ)
– スージーがバイトする大学構内のバーガーショップの店長。
レイ・ガルシア(アイザック・コール・パウエル)
– ジェシーの友人。スージーの動向に注目している。
映画『#スージー・サーチ』作品情報
作品情報
⚫︎ 製作国:アメリカ、イギリス
⚫︎ 尺:105分
⚫︎ 監督:ソフィー・カーグマン
⚫︎ 脚本:ソフィー・カーグマン、ウィリアム・デイ・フランク
⚫︎ 撮影:コナー・マーフィー
⚫︎ 音楽:ジョン・ナチェズ
⚫︎ 原題:Susie Searches (2022)
予告動画
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